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HOYAのペンタックスTOB 本音がみえない交渉の行方

   ペンタックスに対しTOB(株式公開買い付け)による経営統合を提案しているHOYAは、2007年4月23日の定時取締役会で、ペンタックスの賛同を条件に6月以降、TOBを実施できるよう準備を始めることを決議した。当初は同日中にTOB実施を決める構えでいたが、5月末まで協議を継続することも併せて決議し、ペンタックスの出方を見守ることにした。敵対的TOBに踏み込むことには、ひとまず慎重な姿勢をにじませた格好だが、ペンタックス側の対応によっては交渉決裂で再び両社の緊張が高まる可能性もあり、予断を許さない状況が続きそうだ。

HOYAひとまず友好的TOBの道を探る?

4月23日には「10月1日の合併は断念」と発表
4月23日には「10月1日の合併は断念」と発表

   HOYAは取締役会終了後、「両社にとって互いが最善のパートナーであるとの認識に変わりはない」との談話を発表。「引き続き理解を得るべく協議を継続し、6月以降にペンタックスの最終的賛同を条件としたTOBを開始すべく準備を進める」ことを言明した。同日行われた決算説明会で鈴木洋代表執行役最高経営責任者(CEO)は、「今後も真摯に経営統合を目指して検討する」と強調した。

   HOYAはペンタックスの過半数の株式を取得して子会社化することを目指し、1株770円でTOBを実施したい考え。ただ、18日に両社首脳が行ったトップ会談では、ペンタックス側からTOBを受け入れるかどうかについて「真摯に検討する」との回答があった。相手がTOB受け入れ拒否を明言していない状況でTOBに踏み切れば、「敵対的TOBを強行した」というそしりを免れない。このため、ひとまず友好的TOBの道を探った方が、敵対的買収に慎重な自社の社外取締役の同意も得やすく、TOB後の両社の融和も図りやすいと判断した模様だ。

   ペンタックスは経営陣の内紛で合併推進派の浦野文男前社長が解職された4月10日、新経営陣がHOYAとの合併断念を決めていた。HOYAも23日発表した談話の中で、合併を断念することを表明した。ただ、これはあくまで「昨年12月にプレスリリースした形態による合併」を諦めたということで、合併そのものを諦めたわけではない。TOB実施後にこぎつければ、再び合併協議を持ちかけるものとみられる。しかし、ペンタックスはTOBについて、「真摯に検討する」と表明しているものの、本音は反対とみられ、今後の協議でどこまで歩み寄れるかは不透明だ。

独占交渉権を定めた条項めぐり折り合わず

   HOYAがTOB開始の条件に「ペンタックスの最終的賛同」を挙げたことについて、ペンタックス側は今後の協議を通じてHOYAに真意を確認する方針だが、社内では「敵対的TOBの可能性は、これで低くなった」(同社関係者)と前向きに評価する声が聞かれた。ただ歓迎ムード一色というには程遠い。

   06年12月に両社が結んだ経営統合に関する基本契約には、5月末までの契約期間中、第三者との経営統合を協議することを禁じる独占交渉権を定めた条項がある。ペンタックスの新経営陣は5月11日の決算発表に合わせ、独自の生き残り策を公表する方針だが、前社長が認めた同条項が、同生き残り策策定の大きな妨げになるとして、18日のトップ会談で同条項を除外するようHOYAに要請していた。しかしHOYAは拒否している。

   ペンタックスとしては、同条項の削除について引き続き実現を求める方針で、同社関係者は「独占交渉権の撤廃に応じてくれない限り、歩み寄る余地はない」とも指摘している。