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安倍「捏造、言論のテロだ」 「朝日」に怒り狂う「ワケ」

   安倍晋三首相と朝日新聞の「因縁」のバトルが再び勃発した。安倍首相は週刊朝日が掲載した記事に激怒し、「記事は全てでっち上げであって、捏造」「これは報道ではなく、政治運動」「いわば言論によるテロ」など、批判のオンパレードが会見で展開された。一方の朝日新聞社は「広告見出しには不適切な表現があったが、記事内容に問題はない」としており、安倍首相との「全面戦争」がまた始まりかねない様相だ。

「広告見出しに不適切な表現があった」として「お詫び」

安倍首相が激怒した週刊朝日の記事と広告
安倍首相が激怒した週刊朝日の記事と広告

   安倍首相は2007年4月24日夜、週刊朝日(5月4日、11日号)に掲載された、「山口組系水心会と安倍首相の『関係』を警察庁幹部が激白」と題された記事について不快感をあらわにした。この記事は、長崎市長射殺事件の容疑者が所属していた暴力団・水心会と首相の元秘書との「関係」に触れたもので、元秘書が水心会に脅されたことで警視庁が捜査に入り、長崎県警に一切情報提供をしないなかで今回の市長射殺事件が起きた、などとしている。安倍首相はこの報道について、次のように怒りをあらわにした。

「週刊朝日の広告を見て愕然とした。全くのでっち上げで捏造だ。驚きとともに憤りを感じている」
「私や私の秘書がこの犯人や暴力団組織と関係があるのなら、私は直ちに首相も衆院議員も辞める考えだ。関係を証明できないのであれば、潔く謝罪をして頂きたい」
「私や私の秘書に対する中傷でしかない記事だ。いわば言論によるテロではないかと思う。これは報道ではなく政治運動ではないか」

   これについて、朝日新聞は07年4月25日付誌面上で、週刊朝日・山口一臣編集長のコメントを掲載した。しかし、それは、

「一部広告の見出しに安倍首相が射殺犯と関係あるかのような不適切な表現がありました。おわびいたします」

というもので、「お詫び」のかたちをとっているようにも見えるが、同誌自体の見出しや記事内容については言及されていない。

「NHK問題」から続く「遺恨」がまだ尾を引く?

   朝日新聞社はJ-CASTニュースの取材に対し書面で回答し、記事の内容について次のようにコメントした。

「記事は警察庁幹部の話を元に取材した結果を記載したもので、内容には問題は無いと考えています」

   さらに、安倍首相への謝罪については「未定」としており、「安倍首相の『でっち上げ』『捏造』『記者は恥ずかしくないのか』といった発言が適切だったと考えているか」との問いには、「そうは思いません」と回答している。安倍首相の厳しい批判について朝日側が「適切とは言い難い」と考えているとも取れる内容だ。一方の安倍首相事務所にも取材を申し込んだが、こちらは4月25日夕方現在で回答は無い。

   朝日新聞関係者は今回の安倍首相の「激怒」について次のように語る。

「これは『NHK問題』から続いている『遺恨』がまだ尾を引いているということだろう。結局、あの問題は解決せずにうやむやのままだし、朝日は安倍批判をやめる気配はない。それで、安倍も感情的になったのだろう」

   05年1月、朝日新聞は安倍晋三・中川昭一両議員(当時)が「NHK幹部を呼びつけて、改変を求める圧力をかけた」などと報じた。これに対してNHKと両議員が朝日の報道を全面否定したうえ朝日に対して抗議。一方の朝日側も、取材内容を記事に掲載するなどして反論し、稀に見る「大戦争」にまで発展した。今回の「激怒」はその「第2ラウンド」の「ゴング」との見方が関係者には強い。