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次世代無線ブロードバンド免許、新規参入優先に既存事業者から不満の声

   携帯電話に比べて格安な携帯IP(インターネット・プロトコル)電話などが可能となる次世代無線ブロードバンド(高速大容量)通信向けの帯域(2.5GHz帯)の周波数割り当てに関する総務省の免許方針案が波紋を広げている。最大2社に周波数が割り当てられるが、新規参入で競争を促すため、NTTドコモなど第3世代携帯電話(3G)の免許を持つ会社と、そのグループ会社は対象から除かれたためだ。

反発は「想定の範囲内」

ドコモなどからも、不満の声があがっている
ドコモなどからも、不満の声があがっている

   この帯域は、光ファイバー並みのブロードバンド(高速大容量)通信ができる無線通信システム「ワイマックス」など向け。携帯電話の通信方式ではなく、IPの通信方式がベースとなることが想定されており、通信各社が参入を目指していた。だが、今回の総務省案では、NTTグループ、KDDIソフトバンクイー・アクセスなどは、単独での免許獲得の道が閉ざされた。

   現段階で条件をクリアしているのは、ADSL(非対称デジタル加入者線)会社のアッカ・ネットワークスと、PHS会社のウィルコムのみ。免許が取れなければ、3分の1以下の出資による参加や、他社の通信インフラを借りたMVNO(仮想移動体通信事業者)としてサービスを提供するしかない。このため、方針案に対しては、NTTグループだけでなく、かつては後発通信事業者として「新電電」と呼ばれたKDDIからも「当社の期待に反する」と強い不満の声が上がっている。

   ただ、総務省には、これらの反発は「想定の範囲内」。免許方針案の大枠が修正される可能性は少ない。総務省は、次世代無線ブロードバンドでは、携帯電話会社が通信網から端末、コンテンツを一気通貫で管理する「垂直統合型」ではなく、通信網、端末、コンテンツのそれぞれを別々の会社が管理する「水平分業型」のビジネスモデルが適していると判断しているからだ。携帯会社の手の中に閉じ込められていた移動体通信を、有線ブロードバンドと同様に、インターネットの世界に開いていこうとする狙いがある。

早ければ07年秋にも2社が選ばれる

   携帯電話と次世代無線ブロードバンドは、技術の系統が全く異なるため、携帯での実績が無線ブロードバンドのビジネスで役に立つとも言い切れない。携帯事業者が免許を得た場合は、両事業で利用者を取り合うカニバリズム(共食い)への懸念から、次世代無線ブロードバンドの展開に慎重になる可能性もある。総務省は「3Gの事業者は、3G技術の発展の方に投資を集中させてほしい」(移動通信課)と話す。

   日本に有線ブロードバンドを開花させたのはADSLだが、まずADSLを事業化したのは「東京めたりっく通信」などの新規会社、潜在需要を爆発させたのは、やはり新規参入組だったソフトバンクの格安サービスの提供だった。

   次世代無線ブロードバンドの免許方針は7月にも正式決定、早ければ今秋にも2社が選ばれる。その後3年以内のサービスが開始する。水平分業型を志向する以上、端末メーカーやコンテンツ事業者との連携が成功のカギとなるだろう。