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「消えた年金」に国民の怒り 世論調査で内閣支持率急落

   安倍晋三首相の内閣支持率が急落した。2007年5月28日付けで世論調査と分析記事を載せた毎日新聞と日経新聞によると、毎日の支持率32%と日経の同41%は、ともに06年9月の安倍内閣発足以来最低の支持率で、いずれも不支持率を下回った。両紙とも年金保険料の納付記録漏れが原因と分析、自民党内にも「年金問題以外に考えられない」との見方が出ている。

   毎日新聞の調査では、支持率は4月に比べ11ポイント下がり32%となった。不支持率は過去最高の44%。4月は支持率(43%)が不支持率(33%)を上回っていたが、2、3月と同様、再び支持率が不支持率を下回った。

「想像を絶する結果だ」

内閣支持率低下を伝えた5月28日付けの毎日新聞と日経新聞
内閣支持率低下を伝えた5月28日付けの毎日新聞と日経新聞

   毎日新聞は、「年金保険料納付記録5095万件が不明になっている問題に有権者が厳しい目を向けていることをうかがわせた」と分析している。同新聞の取材に対し、自民党の青木幹雄参院議員会長は5月27日、「想像を絶する結果だ。年金問題以外に理由は考えられない」と答えた。 調査結果について、民主党の鳩山由紀夫幹事長は、

「国民は明らかに年金が危ないと感じ、政府に厳しい怒りを投げかけた」

と分析している。さらに、年金問題以外では、28日に自殺を図った松岡利勝農相の光熱水費問題も影響した、とする見方が自民党内にあることも伝えている。

   日経新聞の調査では、支持率は4月に比べ12ポイント急落し、41%となった。不支持率は7ポイント上がり44%だった。日経でも毎日と同様、4月は支持率が不支持率を上回っていたものの、今回は支持率の方が下回る逆転状態となり、同様の傾向があることを示した。

   日経も「公的年金保険料の納付記録漏れが参院選の争点に浮上してきたことや『政治とカネ』の問題を巡る対応への不満などが影響しているとみられる」と、やはり年金納付記録漏れ問題が響いているとの認識を示した。

参院選では年金問題が争点になる?

   さらに、日経は07年7月の参院選で重視する政策を複数回答で聞いた。最も多かったのは「年金・福祉などの社会保障政策」(56%)だった。安倍首相が重視すると表明している「憲法改正」は15%で7位。ここでも年金納付記録漏れ問題への厳しい視線が浮き彫りになっている。

   産経新聞は同日付けで、分析なしで「今週の世論調査から」の欄で内閣支持率を公表した。「支持する」は47.0%、「支持しない」は45.8%と「支持率」の方がわずかに高かった。前の週と比べると、支持はマイナス2.2ポイント、不支持はプラス3.6ポイントだった。毎日と日経とは異なり、支持が不支持を上回っているが、支持が減り、不支持が増える傾向は同様だった。

   各社の世論調査をどう分析するのか。J-CASTニュースの取材に対し、自民党の総裁・幹事長室は「年金記録漏れに対する安倍総理の指導力発揮の『催促』であると受け止める。安倍総理の指示・決意を政府与党でしっかりと受け止めて、国民の年金に対する安心と信頼の回復に取り組んでまいりたい」と文書で回答を寄せた。

   また、民主党の広報委員長、千葉景子・参院議員は「個人的な感想」と断った上で、「消えた年金という生活に直結する問題が、自分の問題として現実味を増し、政府の無責任さへの国民の側からの怒りが表に出た数字ではないか」と分析した。

   年金納付記録漏れ問題を巡っては、政府・与党は5年間の時効の停止や不明記録の全件調査などを打ち出した。5月27日には、安倍首相が自民党の中川秀直幹事長に関連議員立法を今国会に前倒しして提出するよう指示した。社会保険庁には、3月末までに「納付したはず」と約219万人が照会したが、2万人超が「記録が見当たらない」と却下されている。領収書が残っていないことが、却下される主な理由だ。