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「デスノート」取り締まり 中国で起きている不可解事態

   日本発の人気コミック「デスノート」をめぐって、中国で不可解な騒ぎが起きている。中国の地方都市で、ノートに嫌いな人の名前を書くという「デスノートごっこ」が流行っているという報道に始まり、2007年5月末に、「デスノート」などのホラー出版物の取り締まりに乗り出したというのだ。ところが、中国で「デスノート」の海賊版を出版しているとされる出版社は、「ウチで出しているものは『デスノート』ではない、独自の小説だ」と主張しているのだ。一体、どういうことなのか。

本と映像ソフトの集中取り締まりに乗り出す

中国の英字紙でも、「取り締まり騒動」を報じている
中国の英字紙でも、「取り締まり騒動」を報じている

   「デスノート」はノートに名前を書かれた人が死んでしまう、という設定のホラーコミックで、「週刊少年ジャンプ(集英社)」に連載されてブレイクし、単行本は1,500万部を売り上げた。06年には映画化もされ、人気を呼んだ。

   中国でも「死亡筆記」という名前で海賊版(版元の集英社は中国でのライセンス許諾をしていない)や、その関連グッズが出回り、絶大な人気を博している。だが、過激な内容が問題視されることになった。07年5月10日、国営放送「中央電視台」が、中国南部の「広西チワン族自治区」で、嫌いな人の名前をノートに書く遊びが流行っている、と全国放送で報じたことで、さらに騒ぎを広げることになった。これによると、この遊びのための立派な装丁のノートが販売され、値段も50元(約750円)と高価なのだという。

   この影響を受けたのか、中国当局が5月28日から、「デスノート」などのホラー出版物と映像ソフトの集中取り締まりに乗り出す、というのだ。中国メディアが5月26日、いっせいに報じたもので、「子どもの人格形成に深刻な影響を与える」というのがその理由。中国の英字紙「チャイナ・デイリー」によると、5月10日の時点ですでに「デスノート」の書籍2,400冊とDVD400枚が回収されており、この動きを加速させたい考えのようだ。

「政府による回収については、聞いていません」

   新華社通信によると、デスノートの「海賊版」の出版元として矛先を向けられているのが、北京にある華齢出版社という会社だ。同社担当者は記事中で「当局からの出版許可を得ており、出版は続ける」とコメント。抵抗する姿勢を示している。

   国を挙げての取り締まりの影響はどうなのか。集中取り締まりがすでに始まっているはずの5月29日に、J-CASTニューススタッフが同社に聞いてみた。営業セクションでは「こちらでは事情がわからない」としながらも、編集セクションの担当者が取材に応じた。そうすると、こんな意外な答えが返ってきた。

「ウチで出している『死亡筆記』は、『デスノート』ではない、独自の小説です。内容もデスノートみたいに暗いものではなく、ポジティブなもの。青少年の精神に悪影響を与えるものではありません」

   取り締まりについては、

「政府による回収については、聞いていません。各書店で売っているかどうかについても、編集部では、はっきり把握していません。多分、まだ売ってるんじゃないですか?」

と話し、緊迫感は全く伝わってこなかった。

   もはや、当局が何を取り締まろうとしているかもはっきりしない状況で、事態は混迷を深めている。