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自治体もあきれる 折口会長の「ウソ」言い訳

   訪問介護最大手コムスンの数々の処分逃れ問題を受け、ようやく2007年6月8日に記者会見を開いた親会社グッドウィル・グループの折口雅博会長が、その後もテレビ出演を次々果たし、「言い訳」を繰り返している。単なる事務的な管理問題で「故意」「悪意」はない、とした上で謝罪を重ねる折口会長の姿勢に、行政の介護関係者は「よくもそんな事が言えたものだ」とあきれ顔だ。

   「管理、事務処理の能力がなかった」「悪意はなかったが、結果的に不正が出て、介護を食い物にしているといわれても仕方がない」。6月10日朝放送のテレビ朝日系「サンデープロジェクト」で折口会長は、一対一で向き合って座った田原総一朗さんを前に何度も頭を下げた。田原さんは「謝ってごまかそうとしている」と批判した。

「書類上のミスだけなら重い処分はしない」

6月8日の会見で頭を下げる折口会長(右)。テレビでも似た光景が続いた。
6月8日の会見で頭を下げる折口会長(右)。テレビでも似た光景が続いた。

   8日の記者会見同様、同番組の中でも折口会長は、書類上の事務的なミスであることを強調した上で「(客へのサービスに手抜きはなく)そこはきちんとなされていた」と強調した。番組出演の後半では、コメンテーターの高野孟さんから「書類上の問題だけで利用者へのサービスに手抜きがなかったなら、詐欺とかインチキとは言えない」「(書類上の問題だけで処分を受けるなら)制度が理解できない」と同情的なコメントを引き出すことに成功した。司会の寺崎貴司アナウンサーには「事務処理能力の問題にすり替わっている気がする」と疑われたが、折口会長は「悪意はなかった。人を減らしてもうけようという気もなかった」とした上で「しかし責任はある。本当に申し訳ないです」と深々と頭を下げて出演を締めくくった。

   コムスンによる「処分逃れ」が明らかになっている5都県のうち、複数の自治体の担当者に話を聞いた。

   「単なる書類上のミスだけでは、事務所指定取り消し処分に向けた動きには入れません」。西日本のある県の担当者は、週末のテレビ番組は「チラッと」見た程度だが、8日の会見を報じるテレビニュースや新聞報道ですでに折口会長の説明に違和感を感じていた。開業の2カ月前に出した申請書に書かれていた担当者の名前が違っていたのを訂正し損ねていた、という程度の認識を折口会長が示すことについて「そんなことなら注意して終わりです」と反論した。

   別の自治体の担当者によると、単なる過失ではなく故意で著しく不当だと判定したから処分の検討に入った。もっとも、不正を指示したのが折口会長レベルなのかどうかは分からない。とは言え、現場の一担当者のミスとは言えないからこそ重い処分を課そうとしたのだ。

   具体的な例は次のようなものだ。そもそも申請書提出時点ですでに退職していた人の名前を使って申請した。すでに開業したA事務所で働いていることになっているB事務所の人が、A事務所への異動について全く聞いていなかった。広範囲に聞き取り調査をした結果、訂正報告を忘れた、などのレベルではなく「法律で定めた基準を守ろうと努力した痕跡すら見出せなかった」。大切な人員配置をいい加減にして、とにかく事務所を作って介護保険料を受け取る状態にすることを想定した確信犯だ、という訳だ。

「『サービス手抜きなし』よくそんな事が言えたものだ」

   サービスの質についても、別の自治体担当者は「人員基準を満たさず、あきらかに低下を招いていました」と解説する。テレビ番組で「介護に必要なスタッフはいた。サービス低下はない」と折口会長が言明したことについて「よくもそんなことが言えたものだ」と不満そうだ。例えば1事業所で常勤2.5人以上、などの基準があるが、その基準を満たしていなかった。書類上の届け出担当者と違う人が実際にはおり、その訂正書類が提出されていなかったとしても、サービスを維持しようと努力する跡が見えれば、処分するにしても程度を考慮する、という。事務所指定取り消しは、最も重い処分に当たる。

   「悪意はなかった」を繰り返す折口会長。東日本のある担当者は「会長個人の悪意の有無は分からないが、結果の重大さをきちんと受け止めていない」と批判的だ。

   もし折口会長がウソをついていないとすれば、「不正の実態」について会長に報告があがっていなかったという場合だ。もっとも、「処分逃れ」を実行する際には、コムスンの社長は折口会長に相談し、許可をもらっている。折口会長に「不正」という経営の重大問題を知らせない、ということは考えられるのだろうか。

   8施設以外にも6月8日には鳥取県の県議会委員会で、コムスン事務所の不正運営の可能性を県側が指摘した。調査を進めているという。