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ブルドックとスティー ル 買収めぐり法廷闘争の可能性

   ソース業界最大手のブルドックソースと、同社の全株取得を目指してTOB(株式の公開買い付け)を仕掛けている筆頭株主の米系投資ファンド、スティー ル・パートナーズとの対決機運が高まってきた。ブルドックは2007年6月7日、スティールのTOBに反対を表明し、防衛のために新株予約権の発行を核とする対抗策を発表した。これに対するスティールの対応はまだ明らかにされていないが、法廷闘争に持ち込まれる可能性もありそうだ。
   スティールは07年5月18日にTOBを開始した。ブルドック側はスティールに質問状を出すなどでその意図を探り、TOBへ賛否を検討してきた。この結果、ブルドック経営陣は「スティールはブルドックの経営に何ら具体的な方針を明らかにしておらず、ブルドックの企業価値や株主の共同利益を損なう」と判断して、6月7日の取締役会で反対を決議した。

スティールには「行使できない新株予約権」交付

   それと同時にブルドックが打ち出した対抗策は、スティールを含む全株主に1株につき3つの新株予約権を無償で割り当てることだった。敵対的買収者であるスティール以外の株主は予約権を行使することで普通株を交付されるが、スティールだけは予約権を行使できず、代わりに現金を渡されるというものだ。

   これが実行されると、スティールのブルドック株保有比率は現在の10.5%から3%弱に低下する。ブルドックはこの対抗策を6月24日に開く株主総会にはかり、3分の2以上の株主の賛成が必要な特別決議によって承認を得ようという計画だ。
   企業買収にからんでの新株予約権発行に関しては、ライブドアとフジテレビジョンによるニッポン放送の買収合戦でも計画され、東京地裁が新株予約権発行の差し止めを認めている。
   しかし、このケースでは、ニッポン放送は新株予約権発行を取締役会だけでしか決議していなかった。また、フジテレビという特定の第三者にだけ割り当てようとした。
   これに対し、今回のブルドックの計画では、株主総会の特別決議で承認を得ようとしており、しかも、スティールを含むすべての株主に割り当てる手法で臨む。このため、ブルドックはたとえ新株予約権の発行差し止め請求などが起こされ、法廷闘争に持ち込まれても「勝てる」と見込んでいる模様だ。

特別決議が可決されるかは個人株主の動向次第

   だがそれ以前に、そもそも株主総会の特別決議が可決されるかどうかが不透明だ。ブルドック株の約3分の1は個人株主が保有しており、彼らの動向は流動的だ。ブルドック側の防衛策に多数が同調するかどうかはわからないし、さらに、スティールがTOBの買い付け価格を引き上げるなどして、個人株主への働きかけを強めて徹底攻勢に出ることもあり得る。
   このTOBを巡る一連の動きの中で、考えねばならない重要な問題の一つは、ブルドックはそもそも、企業価値や株主の共同利益を高めるために、これまでどれだけ努力を積んできたかということだ。
   今回、対抗策と同時に生産拠点の集約などを盛り込んだ事業計画を発表したが、TOB問題が発生しなくても同様な取り組みをする意思はあったのか。スティールに株式を大量保有されながら、買収防衛策を事前に導入していなかったのはなぜか。こんな疑問の声がある。株主がブルドックの姿勢を慎重に見極めて行動した場合に、その振り子はどちらに振れるのだろうか。