J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

新司法試験問題「漏洩疑惑」 ネット書き込みから発覚

   新司法試験の出題と採点を担当する慶応大学法科大学院の植村栄治教授が、自分が教える学生が試験で有利になるように、実際に出題された試験問題を事前に「示唆」するかのような答案練習会を行っていたことが明らかになった。この「示唆」が発覚したきっかけは、新司法試験受験者のブログなどネット上の「不満」の書き込みだった。

試験の公平性について書き込む受験者相次ぐ

慶大の「事前演習」と類似する問題が新司法試験で出題
慶大の「事前演習」と類似する問題が新司法試験で出題

   2007年度新司法試験の論文式試験が行われた07年5月16日、司法試験受験者のあるブログでは次のように綴られていた。

「公法系は、憲法・行政法とも、慶應内部で2月から実施された試験委員の答練(答案練習会)を受けた人が有利だったという印象。都市計画法が出題されることもメールで示唆がありました。他の受講生が悩みそうなところを悩まずにすんだ人が多かったというあたり、アンフェア」

   さらに、別のブログでは、

「開成高校の教師が東大の入試問題の作成・採点をしていて、しかもその教師が高校内で模擬試験を実施、採点を詳細にしていたら、絶対に社会問題になるはず」

などと、試験の公平性についての疑義を書き込む受験者が相次ぎ、「司法試験の問題が慶大から漏洩したのではないか」とインターネット上で波紋を呼びはじめた。

   こうした指摘とともに、司法試験の出題・採点をする「考査委員」で慶大法科大学院・植村栄治教授が、司法試験で実際に出題された問題を事前に「示唆」する演習内容や法科大学院の学生に一斉送信したメールの文章と思われる記述がネット上の掲示板「2ちゃんねる」に書き込まれた。

   こうした「裏づけ」とともに「騒動」は次第に拡大し、この問題を検証する「まとめサイト」が登場。さらに、こうした「騒動」は、法務省やマスコミなどに対して「タレコミ(情報提供)」を促す運動にまで発展し、2007年6月23日付け各紙の報道へと至ったようだ。

最高裁判例がメールで生徒に一斉送信

   慶大によれば、植村教授は2007年2月から3月にかけて答案練習会を計7回開き、「行政法」について講習を行った。また、この答案練習会の後には、06年度の重要判例をピックアップして紹介するメールを同大法科大学院生に一斉送信していたことも同大は認めた。

   インターネット上では、例えば、国民保健と憲法に関する最高裁判例が植村教授のメールで生徒に一斉送信されたとされており、実際の新司法試験でもこの判例を扱った問題がそのまま出題されている、という具合だ。つまり、同教授が司法試験に出題される問題を事前に知っていて、その問題を解けるように「事前演習」していた疑いがあるというわけだ。

   慶大広報室はJ-CASTニュースに対し、答案練習会については「行政法の補習で、全体的なものを扱っており、その部分(類似すると指摘されている部分)だけを外して勉強会を行うのも難しかった」とし、同教授が一斉送信したメールについては「(学生を)激励するものだった。判例が紹介されたのは事実だが、細かいところまでは把握していない」と弁明している。また、同大は、「2週間前(07年6月10日前後)に2ちゃんねる上の情報を含む指摘を確認し、同教授に確認するなど、調査を進めている段階だった」と答えている。

   さらには、ネット上では、他大学でもこうした問題の「示唆」があったとする指摘も相次いでおり、司法試験の信用性を揺るがしかねない事態を招いている。
   法務省はJ-CASTニュースに対し、考査委員に対して「答案練習会」を控えるよう要請していたとし、

「(答案練習会の)中身がどんなものであっても疑いを招きかねないと考える。仮に事実であれば、試験の公平性と信頼が損なわれる問題だ」

と述べている。一方、慶応大学は、

「今回の件で、社会をお騒がせし、深くお詫びいたします。植村も反省しております」

との見解を示している。