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三菱UFJジャックスを傘下 信販再編ドタバタの舞台裏

   三菱UFJフィナンシャル・グループが信販大手のジャックスを傘下に収める方針を発表したことは、金融界で「まるで株主総会対策」と失笑を買っている。日程もろくに定まっていない段階で発表した理由は、系列の信販大手、セントラルファイナンス(CF)を三井住友フィナンシャルグループに追いやったことがある。だが、CFを系列外に放り出した背景には、三菱グループ得意の「対応」が隠されていた。自業自得としか言いようのない三菱グループの信販再編のドタバタの舞台裏は――。

5%足らずの保有株式で関連会社扱い?

ジャックスの三菱傘下入りが波紋を呼んでいる
ジャックスの三菱傘下入りが波紋を呼んでいる

   公的資金返済の道筋をつけて経営に余裕が出てきたメガバンクは2006年以降、リース会社など傘下企業の再編に乗り出した。そこに消費者金融のグレーゾーン金利問題に端を発した貸金業規制法の改正が降って湧いた。これが高利のぬるま湯にドップリつかっていた信販業界を直撃。みずほフィナンシャルグループ系のオリコが巨額の赤字に陥り、金融支援を受けたことに代表されるように、銀行傘下で信販会社の再編は不可避になっていた。

   系列のジャックスとセントラルファイナンス、三菱UFJニコスを抱える三菱グループにとっても状況は同じ。悲劇の原因は、三菱グループの信販再編が、三菱東京UFJ銀行の三木繁光会長が手がける案件だったことにある。

   三木会長は06年から水面下で再編工作に動く。三木会長にとって再編は自明の理だったようだが、問題は

「5%足らずの株式しか持っていないCFを関連会社扱いした三木会長の態度だった」(三菱関係者)

という。

   CFは旧東海銀行系で、名古屋をはじめとする中部が本拠地。土地柄から独立心が強いうえ、CFの土川立夫社長は、地元財界の雄である名鉄グループ総帥の故土川元夫氏の息子。そんな誇り高き企業に対し、「ジャックスとくっつくのは当然のように振る舞った」ことで、話がこじれた。

苦し紛れに打ち出したジャックスの三菱傘下入り

   プライドの高さでは決して負けない三木会長は業を煮やし、旧東海銀行出身の大物に土川社長の交代を迫ったとされる。CFに対しては借入金の即時返済もちらつかせ、屈服を迫った。

   これに激怒したCFは、三菱グループの雄である三菱商事に駆け込む。個人向け部門の強化を図る商社にとって、信販会社との提携は魅力的だったが、三木会長と軋轢が生じることを嫌った三菱商事は手を引く。このことがダメ押しとなり、CFは「掟破りの系列離脱」(三菱関係者)に踏み出し、三井物産を介して、三井住友フィナンシャルグループ入りが決まった模様だ。

   三菱グループ中枢からは「CF経営者の保身」との声も漏れるが、CFから見れば「ごう慢な三菱への抵抗」(CF関係者)。いずれにしてもジャックスとセントラルファイナンスの統合は幻に終わった。その挙句、苦し紛れに打ち出したのがジャックスの三菱UFJFG傘下入りという訳で、

「これは業界再編じゃなく、グループ内再編」(三菱関係者)

との嘆きも聞こえる。