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大人も子供も「脳トレ」 「インド式計算法」がベストセラー

   「暗算しましょう 89×97=」などと「過酷な要求」の計算を楽にできるようになる、という触れ込みの「インド式」の計算を扱う本が人気だ。子供だけでなく、「脳のトレーニング」として大人の間にも広がっている。インド人学校に子供を入学させる日本人も出てきていて、インドの教育への関心が急速に高まっている。

日本とは違った計算法がおもしろい

「インド式」の計算本がずらりと並ぶアマゾンのサイト
「インド式」の計算本がずらりと並ぶアマゾンのサイト

   アマゾンのサイトで「インド式」と入力すると、計算関係の本がずらりと並ぶ。上位24件中19件が「計算」関連で、うち上位10件はすべて「計算」ものだった。「脳をきたえる インド数学ドリル中級編」「インド式秒算術」「インド式計算練習帳」などなどだ。

   丸善丸の内本店(東京)のサイトで紹介されている2007年7月19~25日のランキングでは、「ノンフィクション」の部門で、「頭が良くなるインド式計算ドリル」(遠藤昭則、ベストセラーズ)が5位に、「インド式計算ドリル」(中村亨、晋遊舎)が10位に入っていた。

   中身はどんなものなのか。「89×97」の例題を挙げていたのは、「インド式計算」関連本で最初期の07年3月に発行され、20万部を売り上げている「インド式計算ドリル」の晋遊舎のサイトだ。「100」から例題の「89」と「97」をそれぞれ引いた「補数」、「11」と「3」が「キー数字」となる。「11」と「3」の合計「14」を「100」から引くと「86」。ここまでが準備だ。最後の答えは、「86」に「100」をかけた8,600に、補数「11」×補数「3」の33を足した「8,633」という具合だ。

   慣れないと「暗算」とはいかないが、「日本式」で「89」と「97」を上下に並べ、「1のケタ」から実直に計算するよりは「不思議」な感じも手伝い「楽しい」かもしれない。

   晋遊舎の編集担当によると、「補数」を使う工夫だけでなく、何種類もの工夫の仕方があり、その都度便利なものを使い分ける楽しみがあるという。暗記については、日本では「9×9」までだが、インドでは「19×19」までとか、世代によっては「30×12」までとか、いずれにせよ日本より多くのケタまで暗記しているそうだ。本では、二桁の暗記は前提とせず、いくつかの「工夫」によって簡単に計算できる方法を紹介している。

「2、3万部もいけば」が20万部越え

   担当者によると、インド式計算に目をつけたのは、携帯ゲームの「脳トレーニング」ブームや、ゆとり教育による「学力低下への危機感」があったことが背景にあったという。小学4年生以上を対象にしているが、最初から「脳トレ」に関心のある大人もターゲットに入れていた。それでも「2、3万部もいけばすごい」と当初は見込んでいた程度だったが20万部を越え「驚いています」。

   晋遊舎の担当者の話では、もともと「インド式」計算として、すべてが体系化され、学校で教えられている訳ではない。インドの人々も、生活の知恵として親から習ったり、暗算が得意なインド人の暗算方法を参考にしたりして学んでいる。現在日本で紹介されている「インド式計算」の方法の全てを、インド人全員が当たり前に知っている、というものではないそうだ。

   また、IT先進国として経済的にも影響力を強めているというインドの状況も「インド式」が注目された背景の一つと捉えている。「英語力と数字に強い国民性が経済発展につながっている印象があります」。

   その教育の「実力」に注目して、卒業しても日本の学校の卒業資格は得ることができないインターナショナル学校のインド人学校に子供を入学させる日本人もいる。東京・江戸川区の「グローバル インディアン インターナショナル スクール ジャパン」には、全校180人中「1割程度」(同スクール)の日本人生徒がいるという。英語力に加え「数字力」を期待したものとみられる。