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「ネットカフェ難民」止めて! 「客足が遠のく」と業界団体訴え

   「ネットカフェ難民」という言葉が「差別的造語」に当たるとして、全国のまんが喫茶、ネットカフェ約1,400店が加盟する業界団体・日本複合カフェ協会(JCCA)がこの言葉の使用を控えるよう要請する声明を発表した。実際にネットカフェで客足が遠のくなどの「風評被害」が出ていると言うのである。

厚労省の調査を「はじめに結論ありき」と批判

「ネットカフェ難民」という言葉の流布によって、ネットカフェから客足が遠のいているという
「ネットカフェ難民」という言葉の流布によって、ネットカフェから客足が遠のいているという

   2007年8月28日、厚生労働省が「住居喪失不安定就労の実態に関する調査報告」を発表し、それを受けて「ネットカフェ難民、厚労省が初の調査」などと報道された。これを受けて、日本複合カフェ協会(JCCA)は同日、「ネットカフェ難民」という言葉が「差別的造語」にあたり、風評被害が発生するとして、厚労省などを批判する声明を発表した。

   厚労省は、定住先がなく、漫画喫茶やネットカフェで寝泊まりする住居喪失不安定就労者数が全国で推計約5,400人に上ると発表。マスコミは「ネットカフェ難民5,400人」などと報じている。

   この声明によれば、「難民」とは広辞苑で「戦禍・政難を避けて流浪する亡命者」と定義されているとした上で、同協会は「大事なお客様」を決して「難民」とは考えていないと強調した。このほか、

「あたかも浮浪者風情のある人が夜な夜なネットカフェに集まっているかのような報道が、多くの客足を遠のけていることにご配慮いただきたい」

としている。

   さらに、厚労省の調査については、「大都市部にみられる一部の現象を全国規模で類推する」点などが「はじめに結論ありき」の調査手法を用いているとして批判している。同協会はこの発表に先立って、2007年7月17日にも、「私たちのお客様を『ネットカフェ難民』と呼ぶのはお止めください」とする声明を発表している。実際、ネットカフェを経営する企業などでは、「ネットカフェ難民についての風評」についての取材について回答を控えるところが多く、業界の中でこの問題について慎重になっている様子が伺える。

「実際に、経営者はお客が減っていると感じている」

   日本複合カフェ協会はJ-CASTニュースの取材に対し、

「『ネットカフェ難民』という言葉で多く報道されることによって、お店に来ることを控えるお客様が増えた。ネットカフェからオンラインゲームをしているときも、『難民が来た』などと名指しされて不快に思われるお客様がいるなど、マイナスのイメージを持たれている。またイメージを大事にする女性客が(ネットカフェを)小嫌いする傾向もあり、実際に、経営者の方はお客様が減っていると感じている」

と述べている。

   また、同協会は、厚労省から「住居喪失不安定就労の実態に関する調査」に協力するよう要請されたが、客に対して「ネットカフェ難民」なのかを尋ねるような調査には応じられないとして、これを拒否している。

   一方、厚労省職業安定局就労支援室は、同協会からの直接の抗議は受けていないとしているが、調査報告については、「国会で『ネットカフェ難民』についての実態を調査するよう指摘があり、そういった人たちがいるかどうかわからないというなかで調査したもの」と「公平・中立的に行政として対処した」としており、一方で07年7月に同協会が「ネットカフェ難民」という言葉の流布について危惧する声明を発表したことを受け、報告書の中で「ネットカフェ難民」という言葉を使わないように配慮したとしている。