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仏語できないと滞在許可下りない 日本人駐在員「困った」

   フランス語の能力が低いと日本企業の駐在員の滞在許可がなかなか下りない。こんな事態がフランスで起きている。かつては第2外国語として人気のあったフランス語。中国語にかつての「座」を奪われ、人気も低迷中だが、フランス語を習得していないがために日本人ビジネスマンが「痛い目」に合う、皮肉な事例が相次いでいる。

大学の第2外国語の履修人気も、中・仏・独という順

これからフランス語を学習するのは大変だ
これからフランス語を学習するのは大変だ

   フランスの移民規制強化のあおりを受け、フランス語能力がそれほど必要とされないにもかかわらず、駐在員の滞在許可がなかなか下りない、という現象が起きている。なかには200時間から400時間の仏語学習が駐在員に義務付けられる場合もあるというのだ。

   ドイツ語と並んで、フランス語はかつて第2外国語として、大学や高校を中心とした教育機関で学ばれていた。最近ではその人気もかつてほどではない。文部科学省の調査によれば、英語のほかにフランス語の授業を開設している高校は05年5月現在で248校。ドイツ語、スペイン語はともに105校で、ロシア語は25校となっている。

   これに対して最近は、中国語や韓国語といったアジア圏の言語が「台頭」しており、英語のほかに中国語の授業を開設している高校は553校で、韓国語・朝鮮語は286校となっている。さらには、07年大学入試センター試験の外国語の受験者数でも、英語、中国語、韓国語、フランス語の順になっており、文科省も「開設科目では、中国語・韓国語が年々増加しているが、フランス語・ドイツ語は横ばい」と説明しており、かつて英語についで人気のあったフランス語の低迷が際立つかたちとなっている。

   最近では、大学の第2外国語の履修状況についても、かつての独・仏・中といった順の人気が、中・仏・独という順になったとの調査もでているほか、大学院生からは「フランス語やドイツ語はもはや人気のない言語。英語や中国語をやっているほうが教員になるにしても得にきまっている」といった話も聞かれる。

滞在許可証が下りにくくなったのは07年春から

   そんなフランス語が、いま日本のビジネスマンを苦しめている。06年の移民法改正のあおりを受け、移民と同様に駐在員にまでフランス語の能力が求められるようになったからだ。法改正は、かねてから、「フランスの言葉や文化を共有しない者は、フランスに来る必要が無い」などと主張していたサルコジ大統領が内相時代に主導したもの。

   日本人の滞在許可証が下りにくくなったのは07年春から。在仏日本商工会議所J-CASTニュースの取材に対し、

「英語でビジネスに対応している人もいる。一律に(フランス語の)語学学習が義務化されると、時間の面で負担が生じる。フランス語がマスト(must)でないひともいるなかで、フランス語を義務化するのはトゥーマッチ(too much)ではないか」

としたほか、「(仏当局は)一般的な移民と同じように駐在員をとり扱っている」と指摘する。さらに、同会議所によれば、仏当局が駐在員に求めるフランス語のレベルも不明確だという。会議所や日本貿易振興機構は07年春から仏当局に、この事態を改善するよう求めている。