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「つかこうへい」台本をウェブ公開 異例の「無料宣言」に賞賛の声

   「蒲田行進曲」「熱海殺人事件」などで知られる劇作家のつかこうへいさんが、自らの台本をウェブサイト上で公開していることが話題になっている。劇団が他人の台本を使って上演する際は、脚本家の許可を取り、使用料を支払う場合がほとんど。それに対して、つかさんは「ご自由に(上演を)おやりください」と、異例の宣言をしたことが、注目されている。

タイトル改変も許容することも異例

「はてなブックマーク」には、つかさんを賞賛する大量のコメントが
「はてなブックマーク」には、つかさんを賞賛する大量のコメントが

   注目されているのは「つかこうへい事務所」の公式ウェブサイト。同ウェブサイトでは、「上演台本」というコーナーがあり、つかさんの台本18本が公開されている。

   自らの台本を公開しているウェブサイトは珍しくないが、つかさんのウェブサイトには、このような異例のメッセージが掲載されているのだ。

「私の作品は劇団員15人ぐらいの貧しい小さな劇団で、あまり装置や衣装なんかにお金を使わなくてもやれるように書いてあります。徐々に上演台本をアップしていきますので、ダウンロードしておやり下さい。(中略) 営利を目的としない、2000円~3000円でやる小劇場や学生さんの小さな劇団等の方の上演料はいりません。自由におやり下さい。お知らせだけ郵送でくだされば結構です」

   一般的に、劇団や学校の演劇部などが他人の脚本を使って上演する場合は、脚本家に上演許可を取り、使用料を支払う必要がある。使用料の額は、日本演劇協会の規定によると、高校演劇や入場料無料の公演の場合、1上演あたり5,000円(脚本家によっては、アマチュア劇団や高校演劇については「無料」とするケースもあり、必ずしも一律ではない)。 入場料を徴収する場合にも、別途金額が定められている。こんな「業界の常識」に対して、つかさんは「非営利なら許可申請も使用料もいらない」と宣言しており、異色ぶりが際だっている、という訳だ。さらに、ウェブサイトには

「高知の劇団でしたら『熱海殺人事件』も桂浜を舞台に『桂浜殺人事件』とされるといいと思います」

   という文言も。脚本家がウェブサイトで台本を公開する際には「無断改作禁止」とクギを指していることも多いが、つかさんの場合は、台本の内容のみならずタイトルの改変も許容している、という点でも異例だ。

「太っ腹」「つかさんスゴイ!惚れた」

   こんな状況に対して、自分のブックマークをネット上で共有し、ウェブサイトについてのコメントを付けられる「はてなブックマーク」では、07年9月4日頃から、何故か、つかさんの台本が公開されているページにブックマークを設定するユーザーが急増し、9月7日18時現在、ブックマーク数は300に迫っている。さらに、

「太っ腹」
「つかさんスゴイ!惚れた」
「すばらしい! 後進を育てる気概をみた!」
「無断リンク禁止論者に爪の垢せんじて飲ませたい」

   といった、つかさんを絶賛するコメントであふれているのだ。

   つかこうへい事務所によると、ウェブサイトに台本の掲載を始めたのは03年ごろで、それ以降も「少しずつ増やしている」という。さらに、つかさんの台本は、上演後にも改訂されることもあるという。例えば、03年に上演された「飛龍伝」の台本は、30人~40人の出演者を想定したものだったが、上演後に、10人~20人の出演者でも上演できるバージョンの台本も登場している。事務所では

「そういった変更点についても反映させた上で公開したいという(つかさんの)思いがあるのではないでしょうか」

   と話している。紙媒体に比べて細かな変更に対応しやすい点をメリットとして受け止めているようで、実際に、ウェブで公開されている台本は

「本では出版されていないものが多いです」

   と話している。

   もっとも、「ウェブで公開されている台本はすべて使い放題」ということではなく、プロの劇団に対しては上演料を求めているし、そうでないアマチュアに対しても「上演をしたことを知らせて欲しい」としている。

   その一方で、掲載されている台本をブログに転載することは「出典を明記していれば構いません」とのことで、やはり「相当太っ腹」なことは間違いなさそうだ。

   著作権に保護期間を50年から70年に延長すべきかどうかで議論が行われるなか、今回の試みは、著作権のあり方に一石を投じることになりそうだ。