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日本は「不況」に突入した? 評論家やマスコミの危惧

   住宅着工の減少、原油高の影響による物価上昇。さらにサブプライムローン不安に加え、不動産バブル崩壊の兆し。景気の先行きが不透明になる中で、経営者のマインドも低下してきた。日本は「不況」モードに入り込んだのではないか。そんな声が評論家やマスコミ報道に出てきた。

全体的に住宅建設のマインドが低下

日本は「不況」に突入したとの声も(写真はイメージ)
日本は「不況」に突入したとの声も(写真はイメージ)

   総務省が2007年11月30日に発表した10月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)によると、生鮮食品を除く総合指数は100.5となり、前年同期比で0.1%、前月比でも0.2%上昇。生鮮食品を含む総合指数は100.9で、前年同期比0.3%の上昇。前月比でも0.3%の上昇だった。原油高の影響がジワリ忍び寄ってきたのが見て取れる。

   さらに、12月から食パン、08年1月からは即席めんをはじめ多くの食品で値上げが予定され、消費者物価指数を押し上げる効果は「0.1~0.2ポイント程度」と予測している。

   国土交通省が11月30日に発表した新設住宅着工戸数によると、10月は前年同月比35.0%減の7万1706戸となり、4カ月連続で減少した。多くのエコノミストが、この住宅着工数の減少が景気回復の「足を引っ張る」とみている。

   引き金となった改正建築基準法は、耐震偽造問題を受けて建築確認や検査を厳格化したものだが、基準を守るために工期が長引いたり、着工できずにいたりと「現場」が混乱している。

   住宅メーカーの積水ハウスは「確認申請手続きに時間がかかっていることは確かです。それ(建築基準法の問題)に加えて、サブプライム問題もあって景気の先行きが不透明になりつつあるので、全体的にマインドが低下していることは否めません」と話す。

   住宅建築会社のみならず、建築資材や住宅販売業者と住宅建築にかかわる多くの業者の売り上げが鈍化。さらには工場などの大型案件の完成が大幅に遅れたり、スーパーが出店を見合わせたりと廻りめぐった影響は小さくない。しかも住宅着工の減少は、地方の中小の建築業者への影響ほど早くやってきて、かつ大きい。東京商工リサーチによると、10月の建設業の倒産は前年同月比25.8%増加して07年最多の390件だった。

新築マンションの完売もウソ?

   ある不動産業者は「建築確認の審査を行う場所は都市部に集中していて、案件の持ち込みが増えれば、地方ほど確認が遅れて工期が延びる。中小の建築業者ほど自転車操業なので工期が延び延びになれば、すぐに死活問題になる」と説明する。

   07年12月15日の週刊現代では「不動産バブル崩壊で、平成大恐慌が日本を襲う!」と、不況どころか恐慌がやってくると報じている。住宅着工件数の減少ばかりではなく、サブプライム問題の発覚以降下落し続ける不動産ファンドにも注目。新築マンションの完売もウソだと指摘している。

   景気減速のもうひとつの要因は、原油価格の高騰だ。米国では現在、1バレル90~100ドル前後で推移。国内では、すでに石油元売り会社が12月出荷分の卸値を引き上げるので、灯油価格も上昇。これからの寒さに、家計にもこたえてきそう。レギュラーガソリンは1リットル150円台の看板が目立ってきた。

   こうした動きを受けて、朝日新聞が全国の主要100社に実施した景気アンケート調査(2007年11月12~26日に実施)によると、「景気が足踏み状態になった」と回答した企業が前回(07年6月)調査のときより倍増して32社になった。「緩やかに下降している」と答えた企業も5社あるなど、経営者が景気の減速を危惧する声は強まっている。

   ゴールドマン・サックス投資信託の社長を務めた山﨑養世氏は07年11月28日のNBonlineで、「ワイドショー型不況で日本経済は沈む」と指摘する。テレビのワイドショーの情報をもとに物事を判断し動く国民と、そんなワイドショーに国民の「声」が反映されていると思っている政治家らが右往左往するうちに、政策が後手に回ってしまうことを表している。