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マザーズ、ジャスダックから東証1、2部に 「指定替え」の動き加速

   東京証券取引所の新興市場マザーズから第1部に「指定替え」する企業が増えている。2006年は2件だったのに、07年は12月21日予定のIT企業・ベリサーブを含め8社になった。06年1月のライブドア・ショック以降続いている新興市場の低迷に嫌気が差していると見られる。

ジャスダックから東証1部、2部へは07年で22社

東証では「マザーズ」から「第1部」への「くら替え」が相次いでいる
東証では「マザーズ」から「第1部」への「くら替え」が相次いでいる

   東京証券取引所によると、2007年に第1部、第2部、マザーズに上場した企業は11月末現在で59社(外国会社を含む)。このうち、エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマートやアイティメディアなど21社がマザーズに上場。8社が「くら替え」したが、差し引き13社が新たな銘柄として登場した。

   新興市場からの指定替えは東証で顕著だが、ジャスダック証券取引所から東証1部、2部へも07年は22社あった。ちなみに、大阪証券取引所のヘラクレスから第1部、第2部への「昇格」は、05年以降ゼロ件だった。

   新興市場の役割として、企業育成の側面がある。東証1部の上場審査の基準も、マザーズ経由であれば直接上場するより容易なこともある。

   12月10日に、マザーズから東証1部に移った日本M&Aセンターは、06年10月にマザーズに上場したばかりだったが、「当初は上場手続きの関係でマザーズに上場しましたが、(第1部は)目標としてありました」(日本M&Aセンター)と説明する。同社の場合、中堅・中小企業のM&Aを扱う仕事柄、上場企業という「信用力」は大きな武器になる。「マザーズに上場したときの恩恵は大きかった」としており、東証1部への指定替えでの効果への期待もうかがえる。

   マザーズからの第1部への指定替えについて東証は「第1部には、やはりステイタスの高さがあります」と話している。

   東証1部への指定替えは、企業にとって信用力の向上による営業面や人材採用面、経営陣や社員の士気高揚といった意識面。資金調達面では、株価が上昇すれば資金繰りがラクになってコストの低減につながる。こうした相乗効果は計り知れない。

1部上場ならメディアへの露出も多く、投資銘柄も選定しやすい

   個人投資家にとって、東証第1部とマザーズが「分かれてある」ことのメリットは、市場によってリスクの大きさが異なることだ。新興市場の株価は総じて、急騰する可能性も高ければ、急落する可能性も高い市場だ。「市場によってリスクの大きさが違うので、そのあたりを判断材料に使って投資している人は少なくないでしょう」(岡三証券アナリスト・宮本好久氏)と話す。

   しかし、現実には銘柄の「指定替え」は増えている。東証や大証の第1部に上場するような企業であれば、メディアへの露出も多く、得られる情報量も多く、投資銘柄も選定しやすい。「個人投資家は、銘柄から入るケースがほとんど」(大証)なので、おのずと情報量の多い東証1部や大証1部に上場する銘柄を選ぶというわけだ。

   取引所からみれば、「上場物件(銘柄)こそ勝負」(大証)だし、企業からみれば個人投資家に選んでもらえる東証や大証の第1部に「身」を置きたいとなる。ある証券関係者は、「企業も個人投資家を無視できなくなった。積極的に(個人投資家に)株式をもってもらおうという考えに変わり、そのためにできることなら何でもしたい」という。指定替えはその現われのひとつのようだ。