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「軽油」に代わる次世代燃料 「FTD燃料」とはどんなもの?

   東京都では排出基準を満たさないディーゼル車の運行が禁止されている。石原慎太郎都知事が規制に躍起になる理由は、粒子状物質や窒素酸化物が、大気汚染物質の発生を引き起こし、健康に悪影響を与えるとされるためだ。一方、トヨタ自動車昭和シェル石油日野自動車ら5社は、2007年12月4日に「FTD燃料」を使用した車両の公道走行試験を開始した、と発表した。「FTD燃料」はディーゼル車に使用される「軽油」に代わる次世代燃料として注目を集めている。環境によいとされる「FTD燃料」とはどんなものなのか?

「スス」がほとんど出ない

「FTD燃料」の実用化にむけて走行実験が始まった
「FTD燃料」の実用化にむけて走行実験が始まった

   「FTD燃料」について、今回の実験の参加企業である日野自動車広報に問い合わせてみたところ、

「FTD燃料とは、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)反応によって製造される軽油(Diesel)と似た成分を持つ合成液体燃料のことです。天然ガス、石炭、バイオマスといった様々なエネルギー資源から燃料を作り出すことができます。『軽油』に代わる次世代燃料として期待されています」

と解説する。将来的には、日本では、「軽油」を燃料とするトラックに使用されるそうだ。

   さらに、トラックから排出される真っ黒な「スス」の原因となっている粒子状物質(PM)を、軽油に比べて約50%、炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を約20%低減することができるという。同広報は、

「FTD燃料は、『スス』の原因である硫黄分やアロマ分といった不純物をほとんど含まないため『スス』がほとんど出ないんです」

と続ける。通常、排気ガス中に含まれる一酸化炭素や硫黄酸化物が排出されることがないために、環境性能がよく低公害化を望めるというわけだ。

   FTD燃料は、近年、プラント(FTD燃料を作る工場)の規模が拡大したことや技術力が上がり製造のコストが下がったことで注目を集めている。南アフリカ、マレーシア、カタールなどでは1日に3万バレルほど製造されているし、2010年にはカタールに14万バレルを製造できる大規模なプラントが稼動する予定となっている。

価格は軽油より少し割高になる

   ヨーロッパでは燃費のよいディーゼル車が人気ということもあって、ギリシャやドイツなどでは軽油にFTD燃料を混ぜた「プレミアム軽油」として販売されている。

   日本では、2002年(平成14年)から「独立行政法人交通安全環境研究所(交通研)」を中心に、「FTD燃料」の使用に向けて開発が進められている。

   「FTD燃料」は、含まれる成分が軽油に似ていることから、車両やガソリンスタンドを変えなくても、既存のインフラを使うことができるという利点がある。しかし、価格は軽油より少し割高になるだろうという。現段階では、精製にコストがかかるからだ。

   昭和シェルでは同様のFT製法で作られた燃料を「エコ灯油」と名づけて、神奈川、群馬、東京で2004年からテスト販売を開始している。普通の「灯油」の3割増しで販売されているが、評判はなかなかよいという。昭和シェル広報はこう説明する。

「灯油に比べて、においの成分(硫黄やアロマ分)を含まないので、匂いが全くありません。また、液体自体もサラサラしていてベタつきもありません。これらの点で評判がよく、リピーターが多いと聞いております」

   今回の実験は、トヨタ輸送の保有するトラックを使用して、愛知県豊田市周辺から同社事業所間(本社と東富士研究所)を走行する。エンジンを使った先行試験結果では、粒子状物質等が減ったことが確認されている。今回は、実際にエンジンを車両に搭載し、燃料噴射系の部品や燃料ホースへの影響を調査する。

   日野自動車広報は、実用化について「実験結果によりますが、将来の地球環境をにらんで実験段階です」と話している。