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宮城県でも「セクハラ校長」 超甘処分の「訓告」という不思議

   埼玉県川口市の「セクハラ校長」の問題が波紋を広げるなか、宮城県石巻市でも学校の校長によるセクハラ事件が発覚した。ところが、校長は同じ学校に在籍し続け、事件の報道が出て初めて、辞職願を提出した。こんな甘い対応の結果、現地ではドタバタ騒動が勃発している。

セクハラ受けた養護教諭はうつ病になった

   事件は2008年3月5日、読売新聞が特ダネとして報じた。これを受けて、同日の石巻市議会で市長が行政報告を行って明らかになった。

   事件の概要はというと、市内の小学校の男性校長(52)が06年6月頃から約1年にわたって、部下の20歳代の女性教諭に対して、手を触ったり、執拗に食事に誘うなどのセクハラ行為を繰り返した、というもの。具体的には、たびたび2人だけの食事に誘ったりしたほか、保健室で手を握ったり、夜間、携帯電話にしつこく電話・メールするなどしたという。養護教諭はうつ病になったという。

   07年4月、養護教諭に相談を受けた友人が市教委に相談し、事件は市教委の知るところとなった。これを受けて、市教委は事実関係を調査の上、「市内小学校の校長にはふさわしくない」などと、校長の異動を求める意見書を任命権者の宮城県教委に送付した。

   ところが、県教委からは「セクハラについての懲戒基準に該当しない」との返答があり、市教委としては「処分」よりも軽い「措置」しかできないことになった。市教委は07年9月、校長に対して「文書による訓告措置」を行った。

   県教委が05年に定めた懲戒処分基準では、「相手を不快にさせる性的な言動」を「セクハラ行為」と定義しており、校長のケースは「直接的に性的な言動ではなかった」と判断された結果、「処分」ではなく「措置」にとどまったものとみられる。

校長の名前が入った卒業証書を受け取るのは!?

   処分が行われなかった結果、校長は同じ学校に在籍し、通常の職務を続けた。朝日新聞によると、市教委はこの理由について

「途中で校長を転任させると、学校が特定され、養護教員にも負担がかかる」

と説明したというが、J-CASTニュースが改めて市教委に確認してみると、

「確かにそういう(朝日新聞が報じたような)部分もありますが、県として処分していただかないと、市としてはどうしょうもないです」

と話し、市のレベルでは「お手上げ」状態であることを強調した。もっとも、県教委側も、校長の行為が正しかったと思っているわけではないようで、3月7日、県の教育長が県議会で

「校長としてあるまじき行為で、任命権者として申し訳ない」

と陳謝している。

   この「セクハラ行為」が報じられたのを受けて、校長は3月7日夕方、「責任を取りたい」などと市教委に辞職願を提出。市教委は休日をはさんだ3月10日に、辞職願を県教委に転送した。校長は、3月8日から自宅謹慎が続いているという。

   これで事態は収束するに見えたが、辞職願に記載された退職日が「3月31日」となっていることが波紋を呼んでいる。この小学校では3月18日に卒業式が予定されているが、

「いくら退職が31日付けといっても、(辞職願を提出した)校長の名前が入った卒業証書を受け取るのは(受け取る側からすれば)抵抗があるだろうし、混乱を招く」(市教委)

というのだ。市教委では3月11月夕方に臨時委員会を開き、県教委に対して3月18日より前に校長を異動させるように申し入れることを決めた。この校長の人事は3月12日以降、県教委で検討されることになるが、卒業式では、教頭が職務を代行する見通しだ。