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毎日新聞の5日連続「配達遅れ」 背景に輸送体制の変更

   毎日新聞の1面に、5日間にわたって「配達遅れ」を知らせる文章が掲載されるという異例の事態が起こった。文面には「新聞輸送体制の変更により」とだけ説明されているが、背景には輸送業者を変更してコストカットを図りたい考えがあるようで、労働組合側は「零細業者が廃業に追い込まれている」と反発を強めている。

「おわび」や「おことわり」が連発される

「おわび」や「おことわり」が相次いだ
「おわび」や「おことわり」が相次いだ

   紙面に異変が起こったのは2008年3月10日の朝刊から。1面に「本社の新聞輸送体制の変更により、本日朝刊の配達が遅れることがあります。ご了承ください」という「おことわり」記事が掲載され、夕刊1面には「朝刊の配達遅れ、おわびします」というタイトルの記事が掲載された。内容は朝刊よりも踏み込んで

「朝刊の配達が一部地域で大幅に遅れ、読者の皆さまにご迷惑をおかけしました。おわびいたします」

と、いわば「実害」が出たことを詫びる形になっている。翌日以降も、配達遅れについて触れた記事は「おわび」や「おことわり」といった形で、3月14日朝刊まで掲載され続けた。

   J-CASTニュース編集部で確認できたのは東京本社発行の朝刊14版と夕刊4版だけだが、少なくとも発行紙面に9回連続で「配達遅れ」記事が掲載されるという異例の事態だ。

   この遅れの原因となった「輸送体制の変更」をめぐって、反発の声が上がっている。声を上げているのは、全労協全国一般東京労働組合(東京労組)などの労働組合だ。同組合によると、「体制変更」とは、印刷工場から販売店に新聞を輸送する業者が変更されたことを指すとのことで、「体制変更のしわ寄せが末端の運送業者に来ている」などと訴えているのだ。

   具体的には、従来は毎日新聞社の新聞輸送は、新聞輸送会社「新聞輸送」を経由したルートと、中小業者に直接委託するルートの2つがあったが、08年3月9日から、後者のルートを運送会社「ヤマト運輸」と「軽貨急配」を経由して委託することになったのだという。

コストカット要求で何らかのトラブル発生?

   同組合では、後者のルートについて

「毎日新聞はコンペを行い、この2社が請け負う段階で従来よりも輸送コストを3割下げています。それをさらに下請けに出すので、末端のトラック運転手はさらに悲惨な状況です。すでにトラック120台が廃業に追い込まれています。紙面から『おことわり』の記事は消えましたが、まだ混乱は続いているはずです」

と訴えている。運送業者2社に確認してみると、両社とも08年3月から毎日新聞の輸送を請け負っていることを明らかにした(「軽貨急配」は、06年冬の段階で大阪での運送を受託している)。

   同組合ではもう一つの

「『新聞輸送』が担当するルートでも、毎日新聞社は大幅なコストカットを迫ったと言います」

と主張。同社に確認してみると、

「係争中なので、取材はお断りします」

と話しており、毎日新聞社側と何らかのトラブルが発生していることを明らかにした。

   J-CASTニュースでは、毎日新聞社に対して、「おことわり」で言及されている「輸送体制の変更」の内容と、その目的、体制の変更で生じた影響などについて取材を申し込んだ。社長室広報担当は

「販売店への新聞の到着が一部地域で遅れたケースもありましたが、読者からのクレームは当初からありません」

とファクスでコメントを寄せ、輸送体制変更の経緯などについてはコメントしなかった。そこで電話で改めて「触れられていない点は『ノーコメント』なのか」と聞くと、

「ノーコメントなのではなく、質問項目に対する回答全体をまとめたものがこれだ」

などと主張し、経緯については明らかにしなかった。

   前出の東京労組では、2月21日から週1回のペースで東京・竹橋の毎日新聞社前でビラ配りなどの抗議活動を行っている。3月19日にも150人規模での活動を予定しているという。