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携帯電話は水に弱すぎ? 苦情増加で業界に「防水」要請

   携帯電話機の水濡れによる不具合について、「水に濡らすような使用はしてないのに有料で修理することには納得がいかない」「この程度の水濡れで故障するのは欠陥品ではないか」といった苦情が多く寄せられている。このため、国民生活センターが携帯業界に「防水」機能を備えるよう要請した。最近の携帯電話の高機能化もあって、苦情件数は右肩上がり。同センターは、「消費者とメーカーのあいだの認識にギャップがある」と指摘している。

修理は原則として利用者の自己負担

雨の中での実証実験でもケータイの基板が腐食した(国民生活センターより)
雨の中での実証実験でもケータイの基板が腐食した(国民生活センターより)

   国民生活センターは2008年5月8日、携帯電話機の水濡れによる故障についての苦情が多く寄せられているとして、電気通信事業者協会(TCA)に、携帯電話の防水機能を消費者に周知徹底することや、日常の軽微な水濡れで不具合を生じないための改善を行うよう要請したと発表した。同センターには、水濡れ故障についての苦情は最近5年間で1013件寄せられており、「右肩上がりに増加している」(商品テスト部)という。

   主な苦情は、「水に濡らすような使用はしていないのに自己責任だから有償修理になるといわれた」「雨や汗がつくことはなく、水に濡らしたこともない。通常使用で故障することは納得できない」「この程度の水濡れで故障するのは欠陥品ではないか」といったもの。

   ユーザー489人を対象にしたアンケート調査でも、携帯電話を使う中で、2割のユーザーに水没経験があり、1割の利用者は水濡れの覚えがないにもかかわらず、販売店で「水濡れしている」と指摘されたという結果が出た。また、同センターが、高温多湿な場所で携帯電話を使用したり、水で濡れた手で携帯電話を使用したりするなどの実験を行ったところ、実際に、防水機能がない機種では、正常に起動せず使用不能になるものや、ボタン操作に反応しなくなるなどして一時使用不能になるものがあった。

   一方、取扱説明書では、これらの使い方は禁止事項として記載されており、水濡れ故障による修理の場合は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3事業者では、原則として利用者の自己負担となる。

   国民生活センターはJ-CASTニュースに対し、

「消費者の水濡れの認識とメーカーが取扱説明書で認識している水濡れの認識にはギャップがある。業界にはこのギャップを埋まるようにしてもらいたい」

と述べている。同センターでは、消費者にも、水で濡れる使い方が不具合の原因につながると注意を呼びかけているほか、防水機能がある機種を選択することを奨めている。

次世代携帯の機種のほうが水濡れに弱い?

   このような苦情が相次ぐ背景には、携帯電話の高機能化やトレンドがある。ある政府関係者は「以前はストレート型が主流だったが、今では折り畳み式が主流。液晶部が回転、カメラが搭載されるなど多機能になり、部品が多くなっていることが背景にある」と指摘する。また、携帯電話事業者の店舗担当者も「次世代携帯の機種のほうが水濡れに弱いという印象がある。さらに携帯は基板が水濡れすると命取りだが、スライド式や折りたたみ式だと水濡れしやすい」と明かす。

   しかし、防水機能がある端末を作るのは開発が難しく、メーカーも及び腰になっている。店頭でも数機種しかないのが現実だ。NTTドコモに厚さ13.7mmの薄型・折りたたみ式の防水ケータイ「F705i」を08年1月に投入している富士通広報は、

「薄くするのが難しかった。また、ヒンジ部分から水が入りやすい折りたたみ式が今のトレンド。ゴツイものなら防水ケータイの開発も簡単だが、形状を考えなければ売れるものになりづらい」

と話す。同社によれば、防水ケータイのニーズは高く、「F705i」は大きなヒット商品になったという。