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「新型インフルエンザ」発生 電車止まり、学校休校という「悪夢」

   伝染性の強い「新型インフルエンザ」が日本で発生した場合、3200万人が感染、64万人が死亡するという厚生労働省の推計が出ている。政府や自治体はどんな対策を発動すべきか、検討が進んでいる。流行を食い止めるには、とにかく人の移動を阻止すること。電車は止まり、学校は休校に追い込まれることになりそうだ。横浜市の中田宏市長は「猛烈な批判を受けるだろうが、それは覚悟の上」としている。

感染した10~30代患者の死亡率は70%台

「新型インフルエンザ」発生の場合、横浜市は市営地下鉄を止める覚悟
「新型インフルエンザ」発生の場合、横浜市は市営地下鉄を止める覚悟

   今世界では、鳥インフルエンザ(H5N1)が、鳥から人に感染する事例が350以上も報告されている。現在は人から人への感染は報告されていないが、この鳥のインフルエンザウイルスが突然変異し、人から人へ感染するようになると、それが「新型インフルエンザ」だ。「H5N1」に感染した場合、38度以上の高熱に出て、咳、呼吸困難、全身の臓器の機能不全などの症状が出る。免疫を持っている人はいないため、世界保健機関の調査では、「H5N1」に感染した10~30代患者の死亡率は70%台。「新型」が生まれ世界に蔓延すれば、最悪の場合、全世界で1億4200万人、日本で210万人の死者が出るとの推計もある。

   日本では抗インフル薬の備蓄や、医療体制をどうするのかの議論が進められている。2008年6月には東京都、千葉県、埼玉県など8つの自治体が「八都県市首脳会議」を組織し、国に対し「首都圏における新型インフルエンザ対策の充実強化等について」と題した要望書を提出した。その内容は、ワクチンや感染者の入院病床確保のほか、不特定多数が集合して活動することの自粛や、公共交通機関の運行縮小などについても触れられている。

   「八都県市首脳会議」にも参加している横浜市だが、中田宏市長は読売テレビの情報番組「WAKE UP・ぷらす」(08年06月28日放送)に出演し、衝撃の対策を明かした。

   中田市長は、新型が発生するのは間違いない、と強調。誰もかかったことのない病気のため、免疫もワクチンもないのが現実であるとし、かつてアメリカ・セントルイス市でインフルエンザが発生したときに公共交通を止めた例を見習うべきだとの持論を展開した。

「もし、東京で一人でも新型インフルエンザにかかったら、横浜市内でパニックを起こさないように、市営地下鉄を止め、学校は休校にする覚悟でいます」

と語った。猛烈な批判を受けることは予想しているのだという。

「交通や集合の規制も視野に入れる」と厚労省

   中田市長がいうように、流行を食い止めるためには、交通の規制と集会の自粛が有効のようだ。日本経済新聞08年7月4日の記事によれば、三菱総合研究所と千葉大学、国立感染症研究所などのシミュレーション調査で、新型の発生時に「学校閉鎖」「鉄道運休」「流行前のワクチン接種」をすべて実施した場合、感染者数は何もしなかった場合の約3分の1になるなど、被害が大幅に軽減できる可能性があることがわかったのだという。

   それでは本当に交通制限などが行われるのだろうか。厚生労働省はJ-CASTニュースに対し、

「未曾有のものがやってくるわけで、事態が事態ですので、交通や集合の規制も視野に入れ、感染の蔓延を回避できる最大限の対応をしていくつもりです」

と話している。交通にかぎらず広範に厳しい措置が取られるのは確実だ。