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重村早大教授が唱える 「金正日すでに死亡」の真贋

   健康不安説がささやかれることも多い北朝鮮の金正日総書記だが、週刊誌が「スクープ」として、「03年にすでに死亡していた」との記事を掲載している。だが、国内外のメディアは「後追い」をすることもなく、専門家からは否定的な声も聞こえてくる。

表舞台に登場している金総書記は影武者?

   記事が掲載されたのは、「週刊現代」2008年8月23・30日号。「金正日はすでに死んでいる」とのタイトルで、重村智計・早稲田大学教授が同誌のインタビューに答える形式。

   朝鮮半島ウォッチャーとして知られる重村氏が、「金正日の正体」(講談社現代新書)を出版するのにともなって掲載されたものだ。

   記事によると、重村氏は「金正日ファミリーから近い複数の人物」から

「金正日総書記は、持病の糖尿病が悪化して、00年初頭ごろから車いす生活を余儀なくされた。そしてついに03年秋に死去した」

といった情報を得たのだという。

   その根拠として、金総書記は00年ごろには活発に外国訪問などをこなしていたが、その後はペースが激減したことや、死亡したとされる03年秋は、9月9日から10月20日まで、動静が報じられなかったことなどを挙げている。現在表舞台に登場している金総書記は「ダミー(影武者)」で、02年8月に金総書記がロシアを訪問し、9月に小泉首相(当時)が平壌を訪問したときも

「体調が悪かった金総書記は、綿密に指示を与えたうえで、プーチン大統領及び小泉首相のもとにダミーを向かわせた」

のだという。そして、今の北朝鮮は、金永南・最高人民会議常任委員会委員長ら「4人組」による「集団指導体制」なのだという。

   もっとも、この「死亡説」を週刊現代が報じてからも、後追いをするメディアは国内外ともに確認できておらず、専門家も否定的な見解だ。

「日本の一民間学者に突き止められるはずがない」

   コリア・レポートの辺真一編集長は、

「金正日総書記の写真などは、米国・中国・韓国などの情報機関が、細かく観察しています。しわ1本、髪の毛1本のレベルで、です。(仮に死亡しているとすれば)中国や韓国が知らないはずがない。そういう(金総書記の生死についての)事実を、日本の一民間学者に突き止められるはずがありません。今回の話は、個人的には興味はありません」

   死亡説や健康悪化説については、金総書記自身の耳にも入っている模様で、韓国の盧武鉉大統領(当時)が07年10月に訪朝した際も、昼食会の場で

「(韓国では)私がまるで糖尿病や心臓病を患っているように報道しているが、事実は全くそうではない」

と発言。さらに、金総書記が「ドイツから医者を呼んで心臓手術を受けた」と報じられたことを念頭に、

「われわれの心臓病研究が弱いので、人を呼んで研究させている。これが間違って報じられている。(記事を書いた人間は)記者ではなく作家のようだ」

と、マスコミを皮肉ってすらいる。

   死亡説が相次ぐ背景については、辺編集長は「『ポックリ逝って欲しい』という願望があるのでは」と推測している。

「多くの人が金正日体制の崩壊を望んでいますが、北朝鮮国内ではデモひとつ起きないし、クーデターが起きる気配もない。そのため、願望として、健康悪化説がささやかれるんですよ」