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ネットで注文6300万仏壇 どんなものなのか、正体を追う

   6300万円の仏壇が売れたという話がネットで話題になっている。単なるいたずらで、注文だけした可能性が強いが、そもそもこんな超高額の仏壇は存在するものなのか。あるとすればどんな材料で、どんな作りになっているのか。別の店でそっくりに見えるものが98万円で売られているという情報もあり、「仏壇の値段」を巡る謎は深まるばかりだ。

「総紫檀材を使用、彫りも大変細かい」と謳う

   「Yahoo!ショッピング」で売られている6300万円の仏壇が動画投稿サイト「ニコニコ動画」のアフィリエイトに載って、6人に売れた。といっても、注文しただけのいたずらだったが、ネットでは、「家が買える値段じゃねーか」「6000万の仏壇があること自体おかしい」と騒ぎになっている。そこへ、よく似た仏壇が別の店で98万円で売られているという話が出てきた。6300万円の仏壇とはいかなるものなのか。

   この仏壇を売っているのは埼玉県に店を構える仏壇店で、サイトには、こんな宣伝文句が書かれていた。

「すごいです! 材質は総紫檀材です。いまではほぼ不可能に違い(原文のまま)総紫檀材を使用。材質だけではなく、彫りも大変細かいです。唐木仏壇にぴったりの材質と造りです。前柱はかご彫り、脇はフローリング作りです。家の宝を探しの皆さん、この商品はお勧めいたします」

   その後、このくだりは削除されている。

   「紫檀」とはインドネシアやタイといった東南アジアに生育している常緑広葉樹の一種で、唐木三大銘木の1つだ。堅くて光沢があり、古くから家具や仏具に用いられている。最近はとれにくくなっていて、希少価値が増しているようだ。

   一方、仏壇をネット販売している「全国有名仏壇店ネット」には、紫檀でできた仏壇(高さ170cm前後の場合)の値段について、目安が載っている。板の心材部を紫檀などの唐木材で包む加工方法があり、何方向から包むかによって値段が変わる。厚さ2~3ミリの紫檀の板で4面を囲う「四方練り」の場合、日本製は200万円以上、大きいサイズでは1000万円以上にもなる。3面を囲う「三方練り」は120万円以上、2面を囲う「二方練り」は80万円以上、もっとも普及している1面のみの「一方練り」は60万円以上といった具合だ。

   さらにここには、「もし実際に100%紫檀材(心材部まで紫檀)で作られたお仏壇があったとしたら、とても値が付けられる代物ではない」と書かれている。

   こんな注意書きもあった。

「お仏壇店のチラシ広告やホームページに『無垢』や『無垢材使用』という言葉が使われています。例えば『紫檀無垢台付仏壇』のようにあたかもそのお仏壇が紫檀材だけで作られたようなキャッチコピーが付けられていることがありますが、実際には100%唐木や銘木を使用しているお仏壇はほとんどなく、具体的には欄間や障子の彫刻などの一部分が無垢材で作られているに過ぎないのです」

大手のはせがわでも6300万円仏壇売っていた!

   では6300万円仏壇は紫檀材だけで作られた「無垢」なのだろうか。販売業者に6300万円の仏壇のことを聞きたいと告げた途端に、電話に出た男性は、「忙しいんです!!」と言い、すぐに切ってしまった。もう一度掛け直すと、

「何ですか!? いたずらですか!? 忙しいんです!!」

と、殺気立った様子。6300万円の仏壇が無垢なのかと尋ねると、

「無垢です」

と、ぶっきらぼうに答えた。店舗もあるようなので、店頭に行ったら確認させてもらえるかと聞くと、「カタログ販売のみです」。さらに取材を続けようとしたが、一方的に電話を切られてしまった。男性には外国人風のなまりがあった。

   仏壇販売店大手のはせがわ(福岡市)によると、仏壇の価格を決める基準は、材質、大きさ、装飾の美しさ、部品の材料といった具合に多岐にわたる。同社でも東京・銀座店と福岡店で、高額な仏壇を扱っているという。価格は、これもなぜか6300万円。高さは180cmで横幅は2メートルと大きい。屋久島に生息する樹齢千年以上の杉「屋久杉」を使用した。年輪が緻密で硬く、木目が美しいのが特徴だ。そこに紫檀とならぶ高価な唐木の「黒檀」を組み合わせている。中尊寺金色堂内陣の荘厳さを参考に、構想から完成まで約6年かかったという大作だ。

   ネットで売られている仏壇と同一値段なことについて、はせがわの担当者は、

「(ネット販売の方は)画像を見た限りでは、6300万円に見えないですね。細かな彫刻がされているようですが、硬さのある紫檀では割れやすくなります。総紫檀とは考えがたいですね」

といっている。