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グーグル10年で頭打ち? 広告志向でユーザー離れも

   創業10周年を迎えたグーグルに、頭打ち説が出ている。経済誌などでは、株価が4割以上も下落して、「曲がり角を迎えている」と報じている。広告依存型でユーザー寄りでないこともあるらしいが、IT業界の巨人はどこへ行くのか。

株価はピークより4割以上も下落

   米グーグルが買収したユーチューブは最近、違法動画がどんどん削除されるようになってきた。これは、07年10月に導入した「ビデオID」の威力が大きいと言われる。テレビ局などの著作権者が番組などのデータをユーチューブに送り、ビデオIDのシステムが違法動画を自動的に検出するシステムだ。

   テレビ局などでは、削除するほかに、動画が投稿されたサイトに広告を掲載することも選べる。広告掲載では、番組の人気度調べ、世界へ向けての情報発信など、マーケティング上のメリットがある。グーグル側にすれば、テレビ局などにも認知され、負のイメージ返上に成功しつつあるわけだ。

   グーグルがこうした試みに力を入れる理由には、ユーチューブを収益源にしようという狙いがある。ネット検索最大手として驚異的に発展してきたグーグルも、08年に入って成長が鈍化。株価が07年秋のピークよりも、なんと4割以上も下落してしまった。収入のほとんどを広告に依存している同社にとって、世界的な景気低迷の影響は避けられなかったわけだ。

   ただ、グーグル側のイメージ返上作戦が、必ずしもネットユーザーに受け入れられているわけではない。実際、ユーチューブでは、違法な投稿が排除された結果、魅力が低下したとの声も聞かれる。

   ITジャーナリストの井上トシユキさんは、こう話す。

「グーグルは、テレビ局と手を組んで、ユーチューブでマーケティングデータを集める狙いがあるのでしょう。表情報の投稿動画が中心になれば、違法動画などの裏情報は、ネットユーザーが勝手に立ち上げるコミュニティサイトに移るのではないか」

課題はネットユーザーの立場に立ったサービス

   グーグルは、08年9月7日で創業10周年を迎えたが、新聞や経済誌などでは頭打ち説も出ている。

   読売新聞の08年9月8日付記事では、「検索連動型広告以外の有力な収益源はまだ生まれていない」と課題を指摘。組織の肥大化や大企業病の恐れもあるとして、「成長神話にも影が差し始めている」と書いている。

   また、9月27日号で大特集を組んだ週刊東洋経済では、SNSトップの米フェイスブックにネットナンバーワン企業の地位を脅かされているなどと指摘。「『成長鈍化』『株価下落』という曲がり角を迎えている。覇権を固め、新しい成長のステージに上ることはできるだろうか」と疑問を投げかけている。

   グーグルでは、ブラウザの「グーグル・クローム」や携帯電話ソフトの開発のほか、再生可能エネルギーへの投資など、事業の多角化を進めている。さらに、課題とされるのが、広告スポンサーばかりでなく、ネットユーザーの立場に立ったサービスができるかという点だ。

   前出の井上さんは、次のように指摘する。

「グーグルは、Gメールにみられるユーザー特性のマーケティングデータをスポンサー企業に提供するといったことには熱心です。ただ、スポンサーばかりに向いていることがネットユーザーにばれてしまうと、ユーザーは快く思わないでしょう。それでそっぽを向かれることが、今後の懸念材料と言えるかもしれませんね」