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オバマ支えた「ネット選挙運動」 国内では「解禁」へ道程遠し

   民主党のオバマ候補の圧勝という結果で終わった米大統領選挙だが、資金集めや、SNSが草の根の組織をつなぐのに利用されるなど、「ネット」が勝敗を左右する選挙でもあった。ひるがえって日本国内のネット選挙解禁への動きを見ると、自民党検討チームの報告書は「議論を進める」と玉虫色の記述で、事実上後退気味だ。民主党は、ネット選挙解禁に向けての法案を提出しているが、2年以上も継続審議の「宙ぶらりん」の状態が続いている。

オバマ陣営専用の選挙運動用コミュニティーサイト立ち上げ

   米大統領選挙では、インターネットを活用した「オバマ流」が目立った選挙だった。ネットを通じて小口の募金を募るやり方は04年に定着していたが、今回の選挙では、大手SNS「フェースブック」の創設者のひとりが、オバマ陣営専用の選挙運動用コミュニティーサイトを立ち上げるなどして活躍。支持者が、選挙関連イベントの情報を有機的に共有できる仕組みを作り上げた。マケイン陣営も複数のSNSを立ち上げたが、提供されている情報のきめ細かさでは、明らかな差がついていた。

   このように、米国では「ネット上の情報が、オフラインでの集会の動員に影響する」ようになり、インターネットは選挙と切り離せないものになっているのが現状だ。

   それに対して、日本国内の状況を振り返ると、解禁への道のりは、まだまだ遠そうなのだ。

   1996年10月、自治省(当時)が、選挙期間中のウェブサイト更新は「不特定多数への『文書図画の配布』にあたり、公職選挙法に抵触する」などとする見解を示し、この時点から、事実上「ネット選挙は禁止」という状態が続いている。

   一時は、解禁に向けての機運が盛り上がった時期もあった。98年には民主党が解禁に向けて法案を提出したほか、02年には、総務省の研究会も解禁の方向を打ち出した。

   自民党も、06年5月に選挙制度調査会が「ウェブサイトは解禁。なりすましのリスクが高いのでメールは禁止」などとする最終報告案をまとめたほか、07年3月には、ネットを使った選挙運動に関するワーキングチーム(WT)の勉強会が10ヶ月ぶりに再開された。

「誹謗・中傷は大丈夫なのか」と先送り

   メディアも、05年末の時点では、

「07年参院選で実現濃厚」(05年12月31日、朝日新聞)

などと期待感を表明していた。

   ところが、ここ1年ほどで急に失速した様子なのだ。自民党の選挙制度調査会は08年6月、公職選挙法の抜本改正に向けた報告書をまとめたのだが、ネット解禁については「議論を進める」といった、消極的な書き方が目立っている。自民党がJ-CASTニュースに説明したところによると、会議の場では

「誹謗・中傷は大丈夫なのか」

といった声が強くあがったといい、事実上の「先送り」だ。

   この背景には、07年春に行われた東京都知事選挙で、「諸君、この国は最悪だ」などと訴えた外山恒一候補の政見放送が動画共有サイトで100万回以上のアクセスを記録したことなどが影響しているものとみられる。特定候補に対してネット上で「突風」が吹くことが実証された形だが、それが「向かい風」だった場合は、致命的な打撃になりかねない、として警戒されている模様だ。

   一方の民主党は。05年12月には「次の内閣」の中に「インターネット選挙活動調査会」を設置。06年6月には、4度目の「ネット選挙運動解禁法案」を提出しているが、今でも継続審議の状態が続いており、事実上「店晒し」となっている。民主党の政策調査会では 「民主党は法案を提出した『張本人』なので、早く審議を進めて欲しいというのは当然」 と話している。

   07年夏の参院選挙では、各党とも公示後のウェブサイト更新に踏み切っており、「法律が現状に追いついていない」ことが浮き彫りになった形だ。ただ、このサイト更新は、各党とも「選挙活動」ではなく「(日ごろ行っている)政治活動」との立場で、当分は「グレーゾーン」での運用を迫られそうな情勢だ。