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「交通費出ない」「社員より高い社食」 連合サイトで浮かぶ派遣社員の悲惨

   仕事などの不満をコメントで吐き出せる連合のサイトが人気だ。中には、派遣社員が給料から交通費を払っているという悲痛な叫びも聞かれる。皮肉なことに、サイト人気は、不況の中で悪化する雇用環境が一役買っているようだ。

不満コメントが10万件を突破

不満コメントを書き込める連合サイト
不満コメントを書き込める連合サイト

   「全日本ご不満放出選手権『booing.jp』」。こんな風変わりな名前の日本労働組合総連合会(連合)のサイト。2008年9月18日に開設されてから2か月で、90万余のアクセスがあり、コメントが10万件を突破した。

「予想では、3か月でコメント1万件を見込んでいたんです。それが、開始後わずか5日で上回り、あっという間にたくさんの書き込みをいただきました」

   連合企画局では、あまりの反響にこう驚く。

   サイトでは、仕事などの不満コメントを書いて「不満注入」のアイコンをクリックすると、ブタのキャラクター「トブ太くん」の鼻にコンセントが刺さる。続いて、風船のように膨れ、怒って赤くなる。その後、トブ太くんをクリックするタイミングに応じて空を飛び、その距離がメートル表示される仕組みだ。

   「お仕事」「恋愛とか結婚とか」「夫婦・家族」など10カテゴリーがある。飛んだ距離に応じて総合やカテゴリー別にランキングも付くが、あくまでお遊び感覚だ。

   とはいえ、その叫びには、事実としたら、悲惨で違法なものも多い。

   例えば、派遣社員からは、次のような痛切な声が上がっていた。

「派遣社員の給与に含まれてしまう交通費を非課税にして!」(都内の30代女性)
「派遣は社食をつかっても高い値段を払わされる。これって差別?」(神奈川県の30代男性)

   このほか、正社員と同じ仕事なのに給料に差があり過ぎる、会社都合の退職なのに失業手当が支給されない、といった不満も。正社員でも、残業代が付かない、休みがほとんど取れない、といった深刻な訴えが出ていた。

「非正規雇用まで目を向けられなかった反省」

   連合によると、不況下の雇用悪化を反映して、一番不満コメントが多かったのが「お仕事」。全体の36.8%もあった。内容は、非正規雇用、解雇、就職難、賃下げといったものだった。男女はほぼ同数で、20~30代が7割も占めた。

   連合企画局の山根木晴久局長は、コメントの内容についてこう話す。

「恋愛といった柔らかいカテゴリーを入れたのに、仕事へのコメントが多いのに正直驚いています。金融危機以降、リストラが増えてきた印象を強く持ちました。雇用現場では、理不尽なことが多いんだなと感じています。よくよく見ていくと、確かに法律違反が結構ありますね」

   もっとも、これらが事実とは確認できないため、利用者には、「連合の取組み」欄を見て労働相談もするように呼びかけている。また、「ほかの人のコメントを見て、自分だけが問題ではないと気づき、解決のヒントにしてほしい」ともしている。

   サイト開設には、不満を労働運動に反映させたいことのほかに、若者らに連合そのものをPRする狙いもある。連合の組合員が年々減っていたことがあるからだ。

   実際、連合労組の組織率は、2007年にピーク時の半分ほどの18.1%にまで落ち込んでいる。比較的新しい産業のサービス業などで組織率が低いことや、企業内で非正規社員への置き換えが進んだことが原因だ。

「組合として、非正規雇用まで目を向けられなかった反省があります。経営者が使い勝手のために利用していることに最近ようやく気がつきました。遅ればせながらも、ここ数年は非正規雇用対策に力を入れています」(山根木局長)

   その成果もあって、連合の組合員数は、07年に13年ぶりに増加に転じて前年より10万人ほど多い675万人にまでなったという。