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「墓石画像の公開で困った」 ストリートビューに自治体反発

   グーグルの地図サービス「ストリートビュー」に、プライバシー侵害などと自治体から異論が出ている。都内では、町田市議会が意見書を採択し、杉並区は同社に申し入れもした。自治体はどんな悩みを抱えているのか。

意見書採択、グーグルへ申し入れ

「墓地内で撮影した画像がストリートビューで公開されている。問題はないのか」

   横浜市に2008年8月中旬、市民からこう訴える投稿があった。同市が確認すると、現地写真が見られるグーグルのストリートビューに、港南区の市営日野公園墓地の様子が写っていた。よく見ると一部では墓石の名前が読み取れた。市の条例では、墓地内の通路からなら業務撮影するには許可が必要だ。グーグルは、一般公道のほか通路からも撮影しており、無許可だった。

   市の要請で、グーグル側は9月までに、公道分も含めて画像をすべて削除した。とはいえ、同市環境施設課の担当は、こう悩みを漏らす。

「公道から撮影する場合でも、グーグルには事前に配慮してほしいですね。画像削除は強制できませんが、お墓の存在が知られて嫌な思いをする人もいるわけですから」

   ストリートビューへの苦情は、もちろん墓地ばかりではない。住宅内まで写っていたり、ぼかされた人の顔が判別できたり。ネット上では、ラブホテルに入ったり路上でキスしたりする男女の姿が見つかったなどと、大騒ぎになった。

   自治体でも、こうした苦情に頭を悩ませているようだ。

   東京都町田市議会では10月9日、実態調査や法整備などを国や関係機関に求める「地域安全に関する意見書」を賛成多数で採択した。そこでは、「空き巣や振り込め詐欺等の犯罪に悪用される危険性、児童生徒の通学路や教育施設等に防犯上の不安を生むとする声もある」と指摘している。また、杉並区は11月21日、区民からプライバシー問題などの懸念の声が寄せられているとして、グーグル側に適切な対応をするよう申し入れたことを明らかにした。

日弁連も緊急集会で問題点報告

   ストリートビューを巡っては、海外でも規制したり、訴訟を起こしたりするケースが出ている。

   フランスでは、大通りや観光地のみが撮影され、住宅街は除外された。また、アメリカでは、結果的に自宅内まで公開されてしまった人がプライバシー侵害だとして訴訟を起こした。

   こうした問題は、日本の司法界でもようやく議論され始めている。日本弁護士連合会では、2008年11月21日に「ストリートビューに関する緊急集会」を開き、問題点を報告して意見交換した。姫路獨協大法科大学院の平松毅特別教授は、報告の中で、ドイツが個人情報保護法を改正して、安全確保などが人格権より大事な場合のみにビデオ監視が許されるようにしたことを紹介。日本でも、監視通知や消去義務などを取り入れた法改正が求められるとした。

   一方、フリージャーナリストの瀬下美和氏は集会報告で、グーグルは自主的にいつ、どこで、どのように撮影するか説明することが必要だと述べた。また、削除要請をするにしても、同社サイトを見なければ、電話番号が調べられないといった問題点も指摘した。

   削除要請については、杉並区では、区のホームページで同社サイト上におけるその方法を紹介している。分からない場合の同社電話番号も載せてある。

   グーグルの広報担当者は、ストリートビュー問題について、次のように話す。

「プライバシーには配慮しており、各国の法律を調べ、それに沿った形でサービスを行っています。削除要請も当初から応じており、要請があれば急いで対応しています。中身は申し上げられませんが、自治体の方などとは、プライバシー問題などについてのやり取りを今行っているところです」