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破綻観測まで出るNYタイムズ 新聞はもうだめなのか

   米新聞第3位のニューヨーク・タイムズ紙の経営が危ぶまれている。ここ数年の部数減と広告不振に加えて、金融危機が直撃して、収益は急激に減少。頼みの綱だったインターネット関連の収入も落ち込み、破綻か、買収か、といった声も聞かれる。

頼みのネット事業収入も落ち込む

   米国の人気ブログ「シリコンアレー・インサイダー」は2009年3月4日、「ついにニューヨーク・タイムズに買い手が!」というタイトルの記事をアップした。「ニューヨーク・タイムズはついに、(同社の)株価がゼロになると考えていない、豊富な資金力をもつ友人を見つけたようだ」と書き出し、株価の動きや取引量から、「誰かがニューヨーク・タイムズを買っている。誰だ?」と締めくくっている。この話がどこまで本当かは定かではないが、ニューヨーク・タイムズの株価がゼロ、つまり破綻が現実のものとして語られているのだ。

   実際同社は、09年5月に返済期限を迎える4億ドルの資金調達に苦労しているという。08年10月時点で現金準備高が4600万ドルしかなく、傘下のボストン・グローブ紙や、メジャーリーグ球団・ボストンレッドソックス株、その他資産の売却がささやかれていた。また、一部にはグーグルやマイクロソフトが買収に乗り出すのでは、という噂もあったようだ。

「5年後にもニューヨーク・タイムズが紙で発行しているかどうか、私には本当に分からない。(紙でも、ネットでも)私はどちらでも良いんだけどね」

   米ニューヨーク・タイムズ紙のチェアマン、アーサー・サルツバーガーJr.氏は2007年、スイスのダボスで開かれた「世界経済フォーラム」の中でこう語ったという。確かに、ネットの取り組みは米国の新聞社の中でも一番進んでいた。だが今、その頼みの綱さえも苦境に陥っているのだ。

2009年はなんとか食いつなげるが…

   同社の発表によると、08年第4四半期の純利益は前年比47.8%減。広告収入も同17.6%減と、急激な減少を見せている。紙に代わり力を入れてきたインターネット事業の収入も同2.9%減と冴えない。これを受けて、09年2月にはメキシコの富豪カルロス・スリム氏に年利14%で2億5000万ドルを借り入れた上、09年3月にはマンハッタンの中心地に保有する自社ビルの一部を2億2500万ドルで売却、プライベートジェット機も売りに出しているという。

   米国のメディア会社を調査しているフィッチ・レイティングサービスは「もっと多くの新聞社が債務不履行に陥るだろう。09年には数社が整理され、10年には新聞が全くなくなる地域が出そうだ」といい、米新聞社への見通しは限りなく暗い。

   ニューヨーク・タイムズは本当に潰れるのか。ネット業界動向を伝えるブログ「メディア・パブ」を運営する田中善一郎さんは、

「売れるものをどんどん売り払い、また一部の記事を有料化するなどして、2009年はなんとか食いつなげるでしょう。ただ、2010年については良く考えないと厳しいと思います。広告売り上げを伸ばすのも来年まで無理でしょう」

   また、日本の新聞社についても厳しい状況のようだ。

「これから部数も広告も増える、という可能性はかなり低い。かといってオンラインの売り上げも厳しい。日本でもポータルサイトは強いですし、英語圏に比べ市場規模が狭いですから」