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セブン&アイ百貨店事業に大なた 「富裕層中心はやめる」と宣言

   流通グループ最大手のセブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店であるそごうと西武百貨店に大なたを振るう。少子化と消費者の堅実志向による百貨店事業の長期低迷が鮮明になったことに対応するもので、対象は不採算店舗の閉鎖や人員削減にとどまらない。グループ内のコンビニチェーン、セブンイレブンや、総合スーパー、イトーヨーカ堂との共通商品も積極導入し、「高級」「非日常的」といった百貨店像からの脱却を目指すという。

「消費者の意識は今後も元には戻らない」

   同グループの2009年2月期連結決算は、売上高に当たる営業収益が前年同期比1.8%減の5兆6499億円となり、05年9月の持ち株会社移行後で初の減収となった。営業利益は2818億円で辛うじて横ばいを維持したが、その8割弱はセブンイレブンを中心とするコンビニ事業の収益。百貨店事業の利益は28.8%減の183億円、スーパー事業は27.4%減の247億円で、百貨店の利益は10年2月期にさらに20%弱減少すると予想する。

   同社の鈴木敏文会長は「『無理して今買わなくていい』という消費者の意識は今後も元には戻らない」と強調する。08年秋以降の消費不況で動きが止まったのは高級ブランドばかりではない。毎年、季節の変わり目には新しい服を新調するという消費者の意識も、「着られるものは今年も着る」という当たり前の姿になっただけ、と関係者は口をそろえる。それが、衣料品を主力とするスーパーにも波及し、業界総崩れの様相につながっているというわけだ。

   東京・池袋。西武百貨店本店の地下2階食品フロアの一角に「セブンプレミアム」ブランドを冠した商品が山積みされている。グループのスーパー、イトーヨーカ堂が開発したプライベート・ブランド(PB)商品だ。店員の一人は「若い女性やサラリーマンが会社帰りに買っていくケースが大半で、人気は上々」という。

   セブン&アイは、百貨店持ち株会社ミレニアムリテイリングの傘下にあったそごうと西武を年内にも合併させることを決めている。百貨店事業を孫会社ではなく直接子会社にすることで統制を強め、グループ内の相乗効果を徹底的に追及する方針だという。百貨店でのPB商品販売もその一環だ。

西武の札幌、旭川の2店舗も「状況に応じて判断する」

   セブン&アイの村田紀敏社長は「百貨店といえども日常性を強化するべきだ」と、富裕層を主力とした百貨店像からの脱却を宣言している。2月にはそごうの本店で、再生の象徴でもあった心斎橋本店(大阪市中央区)の売却を発表したのに続き、西武の札幌、旭川の2店舗も「状況に応じて判断する」と閉鎖の可能性を否定しない。

   ある百貨店の首脳は「これだけ素早い決断ができるのは、不採算店の閉鎖が日常業務で、顧客の変化を重視するコンビニ出身者の発想」と見る。「巨大なシステム産業」ともいわれるコンビニ、スーパー業界と、「労働集約産業」といわれる百貨店の連携という新しい試みが成功するか否か、関係者は注目している。