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神戸で一時供給不足 なかなか手に入らないタミフル

   新型インフルが発生した神戸市で、治療薬のタミフルが一時供給不足になっていることが分かった。厚労省などでは、在庫は十分あり、病院が過剰に溜め込まないように問屋が配慮しているのでは、などと説明している。本当にタミフルの供給は大丈夫なのか。

「神戸のほとんどの病院でタミフルを切らしている」

「問屋に頼んでも、なかなか手に入らないんですよ。タミフルは、足りませんね」

   新型インフルエンザが国内で初めて発生した神戸市について、同市医師会の事務局長は、こう窮状を訴える。

   同市は、関西の市町村で感染者が最も多く、2009年5月18日夕までに53人に上る。各病院には問い合わせや受診者が殺到しており、事務局長は、「医療的にみれば、もうまん延期と言ってもいいです」と明かす。

「どうも在庫調整がかけられていて、問屋が流通に出さないようです。発熱外来がある一部の病院を除き、神戸のほとんどの病院でタミフルを切らしていますね。いつ手に入るか分からない不安があります」

   これに対し、兵庫県の薬務課では、市場流通分については、県内で4万9000人分の在庫があると説明。現状ではこれで十分対応できるといい、「流通に支障がないようにと問屋には指導しています」と言う。入手困難の理由については、「過大な発注にならないように、問屋が分割で納入しているからでは。初めてタミフルを注文する場合は、お断りしている可能性もあります」とみている。

   同県では別に、新型インフルに備えて45万8000人分を備蓄しているが、それを取り崩す予定もないという。

   どうやら、神戸市では、タミフルの在庫はあるようだが、一時的な供給不足が出て、医療現場が混乱しているようだ。

厚労省「不足していることはございません」

   全国的にみて、タミフルの供給不足は起きるのか。

   厚労省の結核感染症課では、タミフルの在庫について、「メーカーと問屋にたくさんあります。不足していることはございません」と強調。神戸市で一時的な供給不足が生じたことについては、兵庫県と同様な理由を挙げている。タミフルの薬価は公定価格になっており、問屋でもそれに準じた価格で販売されるとしている。

   タミフルの備蓄については、人口の45%を目標に進めており、現段階で3400万人分を備蓄済みだという。結核感染症課では、「まだ患者が何万人という規模ではありませんので、市場流通分で対応できると考えています。備蓄を取り崩すところまで来てないということです」と話す。しかし、新型インフルのまん延状況によっては、取り崩しも考慮に入れるとしている。また、別の治療薬リレンザについては、470万人分を備蓄してあるという。

   新型インフルに詳しい、けいゆう病院の菅谷憲夫小児科部長は、タミフルについて、こう指摘する。

「日本は、まだ第1波に至る前の段階で、新型インフルエンザがくすぶっているだけの状況だと言えます。この段階では、タミフルは十分あると思います。供給不足は、溜め込んでしまう病院があるので、問屋が関西に広く行き渡らせようと少ししか出さなかったためでしょう。3400万人の備蓄があれば、この冬ぐらいまでは大丈夫でしょうが、被害がひどくなれば足りるかは分かりません」