J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

楽曲と歌声が「10年に一人」 「JASMINE」売り出すソニー戦略

   デビュー前なのにデビュー曲が「着うた」有料配信で売上げランキング1位になった20歳のシンガーソングライターがいる。「JASMINE(ジャスミン)」。「着うた」のヒットからCDセールスを狙う戦略が実を結ぼうとしている。この「ポスト宇多田ヒカル」と称される「JASMINE」は、プロモーション戦略も宇多田ヒカルの売り出しを参考にしているという。

史上初「着うたフル」デビュー前NO.1

   「JASMINE」のデビュー曲は「sad to say」。R&Bエッセンスが盛り込まれていて、本人が19歳の時に作詞、作曲をした。出身は東京で、13歳でゴスペルの聖歌隊に加入し、15歳でアメリカ遠征に参加したことが後の音楽活動に影響を与えた。17歳から都内のクラブを中心に歌手活動を始め、レコード会社大手と契約。2009年6月24日にデビューした。

   彼女はデビュー前から「異例」続きだ。配信サイト「レコチョク」の「着うた」で09年6月3日、デビュー曲を有料配信したところ、週間ランキングでいきなり3位。同17日から同サイトの「着うたフル」で配信したところ、週間ランキングで初登場1位になった。CDデビュー前の1位は史上初。また、レコード協会「着うたフル」の有料音楽配信チャートでも初登場第1位になっている。これまで「着うた」「着うたフル」でのダウンロード数は20万。さらに、09年4月からラジオ「J-WAVE」で1時間のレギュラー番組が始まっているが、彼女の歌が気に入ったというラジオ担当者からの強い要望によって決まったという。

   新人歌手がいきなりヒットする場合、企業とのタイアップ広告や、テレビなどを使ったプロモーションがあるのが一般的だ。しかし、彼女はそうした露出はない。公式サイトやブログができたのもデビューの日だった。

   実は、これは彼女が所属するソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズの戦略。彼女のメインターゲットは中高校生だと決めたときに、CDを買うよりも「着うた」でダウンロード購入する層だと判断した。そして、「着うた」をきっかけに楽曲が有名になれば、CD購入にも繋がっていくと考えたのだ。

   まずは「着うた」でヒットを狙うため、彼女の情報は一部の携帯サイトだけに置き、楽曲は09年5月中旬から有線放送だけで流した。楽曲は好評で、有線の「問い合わせチャート」で1位になったが、ファンは彼女について知ろうとしてもメディアに露出はなく、パソコンのインターネットでも検索できない。やがて口コミや掲示板などへの書き込みで、ケータイサイトに情報があるということがわかっていく。多くのファンがそのサイトに集まった時を狙い「着うた」を配信。ヒットに繋げたという。CDが発売されたのは09年6月24日で、オリコンの週間ランキングでは13位。デイリーランキングでは27日からベストテンの常連になっている。

「宇多田ヒカルの売り出し方を参考にしている」

   こうした戦略ができるのも、彼女の楽曲と歌声が「10年に一人」と言えるほど時代を変えるほどの実力があるからだ、とソニー・ミュージックは話す。10代から作詞作曲をしていることや、R&Bテイストの楽曲などから、デビュー当時の宇多田ヒカルを彷彿とさせるものがあり、そのため、

「JASMINEをプロデュースする際、宇多田ヒカルさんの売り出し方を参考にしている」

と同社は打ち明ける。そういえば、ラジオのパーソナリティーは勤めるが、テレビに出なかったり、情報が少なくベールに包まれていたり、と共通する部分が多い。現在の楽曲がヒットしていても、当面はテレビ出演をする予定はないという。宇多田ヒカルがデビューして10年。その10年に一度次の時代に塗り替える存在として「JASMINE」を育てていきたいと同社では話している。