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ドラマ低迷、デーブが直言 「日本の俳優演技ヘタ、自覚がない!」

   「演技ヘタです。もうどうしようもない」。テレビ番組でデーブ・スペクターさんが日本のドラマを一刀両断したことが話題になっている。一方で、演技だけでは評価できないという異論もあるが、どうなのだろうか。

俳優の演技はみなオーバーになる

「婚カツ!」のサイト
「婚カツ!」のサイト

   テレビドラマは最近、視聴率低迷がよく話題に上る。

   SMAP中居正広さん主演のフジ系ドラマ「婚カツ!」は、2009年6月29日の最終話までに、視聴率が放送の半分ほどで10%を切った。これは、月曜9時のドラマでは異例とされた。また、同じジャニーズ所属の中山優馬さん主演のフジ系ドラマ「恋して悪魔」は、7月7日スタート時の視聴率が、なんと8.5%に。最近は、20%を超えれば成功と言われている。

   そんな状況が頭にあったのか、テレビプロデューサーのデーブ・スペクターさんが、日本のドラマに物申した。

   発言したのは、TOKYO MXテレビで7月2日深夜放送のトーク番組「博士の異常な鼎談」。日米テレビ文化論について語ったデーブさんは、米ABCテレビ番組での経験をもとに、「ハッハ、もうどうしようもないね、ドラマは。悪くなる一方」と口火を切る。日本のテレビでも例外的に不毛だとして、その原因に、演技が下手であることを挙げた。そして、こうも語る。

「2割が上手だと思うんですよ。8割はもう自分が下手だということの自覚がないから恐ろしい」

   そして、このためか、俳優の演技はみなオーバーになるとした。そんなデーブさんが面白いドラマに挙げたのが、トヨエツこと豊川悦司さん主演で1997年に放送されたTBS系の「青い鳥」。視聴率は、当時としても各回20%を超えなかったものの、「もうすべての役者が(演技を)抑えていた」と絶賛した。

   トークでは、アメリカのようにオーディションを経ず、芸能プロが腕力でドラマの主役を決めてしまうことも話題に。出演料の割合が高く、質を高める制作費にお金が回らないことも指摘され、デーブさんも「(アメリカでは)1億とかね、お金かけますから」と肯いていた。

演技だけでは評価できないと異論も

   総じて言えば、デーブ・スペクターさんが言いたいのは、日本のドラマは、まずキャストありきでアイドルの獲得ばかりに走り、抑制の効いた実力派俳優を起用しないことに問題があるということらしい。

   一方、ドラマ評論家の中町綾子日大芸術学部教授は、日本のドラマは様々な見方で評価できると話す。

「日本の視聴者には、演技のよさを求めている人ばかりでなく、そうでない人も多くいます。感情表現の細やかさ、深さに重きを置いたのが、伝統的なドラマの見方。一方で、そんなドラマを『ウザい』などと敬遠する人もおり、伝統的でない表現のドラマも高視聴率を得ています」

   その例として、中町教授は、水嶋ヒロさん主演で2009年1~3月にフジ系で放送された「メイちゃんの執事」を挙げる。「ストーリー性もありながら、『キャラ萌え』という感じで、水嶋さんがブレイクしました。心情表現は細やかというよりも、カリカチュアされたものでしたが、それが魅力となっていました」

   そして、織田裕二さんや阿部寛さんのように役作りを大切にしている場合もあるが、必ずしも高視聴率に結びついていないケースもあることを指摘する。

   さらに、ドラマについて日米の文化の違いもあるのではないという。「しっかりした脚本メソッドや緊迫感のある演技は確かに見応えがあり、高く評価されます。しかし、日本のドラマには、時代とビビッドに呼応するよさがあります。それぞれの人が、それぞれの見方でドラマを楽しんでいる。そのひとつに、自分のいまの感覚にぴったりくる表現を探して見ていることも多いのではないでしょうか」

   中居正広さん主演の「婚カツ!」は、低視聴率だったものの、ビデオで見る録画率は高かった。中町教授は、こう語る。

「表現は、エキセントリックなところもありましたが、コミカルで気持ちよいものでした。学生たちは、『なぜ週刊誌に叩かれたのか分からない』と言っていましたよ」