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「辛子明太子」製造販売相次ぎ倒産 消費低迷、原材料高騰に競争激化

   辛子明太子の本場の九州・福岡地区で、製造販売業4社が相次いで倒産、破産を申請した。不景気で単価の高い明太子の売れ行きは頭打ちだ。ここ数年、原材料のスケトウダラの輸入価格が高騰していることも収益を圧迫した。生き残りをかけて競争が厳しさを増している。

「博多まるきた」「徳永」「千徳」が倒産、破産申請

   最初に倒産したのは、辛子明太子製造販売の博多まるきた(福岡市)だ。2008年12月24日に福岡地裁に民事再生法の適用を申請。負債総額は114億3700万円に上る。

   同社は1951年に創業し、74年に辛子明太子の製造に本格参入。91年に約7億2000万円を投じて本社工場を新築し、04年には中国工場を増設した。九州全域と各地のスーパーや食品店に卸し、卸業務としては全国トップクラスで、05年6月期には199億3500万円と過去最高の売上高を計上した。

   順風満帆だったが、毒ギョーザ事件で中国産食品への不信感が高まり、中国産の明太子が売れなくなった。加えて過去の設備投資や原料価格の高騰で、仕入在庫が増加して借入金が膨らみ、資金繰りが悪化した。

   続いて福岡市の徳永と関連製造会社の千徳が09年5月29日、福岡地裁に破産手続開始を申請した。北九州市の明太子専門店も民事再生法を申請するとされている。

原材料をまとめて仕入れるので、評価損や不良在庫が発生しやすい

   東京商工リサーチ福岡支店の情報部担当者は、相次ぐ倒産について、

「不景気で明太子業界全体が頭打ちで、供給過多になっています。そうでなくても明太子はリスクが高い。原材料のスケトウダラの漁獲量が不安定なのでまとめて仕入れる必要があり、評価損や不良在庫が発生しやすいです」

と説明する。

   ここ数年、欧米で健康志向が高まり、スケトウダラの需要が増加して輸入価格が高騰していることも収益を圧迫した。

   一方、福岡市内の同業者は4社の倒産について、「経営の失敗だ」といっている。

「(倒産した企業は)どんどん拡大していましたけれど、言い方は悪いですが身の丈にあわない経営が一番の原因だったのではないでしょうか。明太子は単価が高いので、製造、販売、在庫管理をうまくやらないと、ほかの魚介類に比べて資金繰りが悪化しやすいです。本業でやるなら100億円の現ナマがないと仕入れできませんし、最近は銀行が景気の悪い明太子業者に貸し渋りしていると聞きます」

   同業者間の競争も激化している。安い明太子を製造販売するタケショク(大阪市)はグループ会社、千曲屋を08年11月に福岡市に設立。それまで卸業を専門としていたが、初の小売店を博多に3店開業した。老舗店舗の場合、1キログラムあたりの価格は1万円が相場だが、千曲屋は同3500円と、圧倒的な安さが売りだ。同社担当者は、「高級なイメージのある明太子だが、毎日のおかずとして食べてもらいたい。後発なので老舗にはない路線でやっていく」といっている。

   大手のなかには明太子以外の商品に力を入れたり、卸から利益率の高い小売りにシフトする動きもある。

   東京商工リサーチ福岡支店の情報部担当者は、

「ブランド力がなく、販売力がないメーカーは淘汰されていくと思います」

と話していた。