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「月商800万円」という甘い罠 「ドロップシッピング」に悪徳業者

   在庫を持たずにネット上で商品を販売する「ドロップシッピング」を副業として始める人が急増する一方で、「月商800万円稼げる」「1日15分から稼げる」などとうたう悪徳業者が出現している。中には、1人で数百万円も損をした人も出ている。一度支払った契約金を取り戻すことは難しく、泣き寝入りするしかないのが現状だ。

130万円支払ったが、利益は1500円のみ

「ホームページ開設等費用130万円を銀行から借りて支払った。3カ月で元がとれると言われたが、利益は1500円のみ。業者と連絡が取れない」(30歳代男性)

   という相談が、東京都消費生活センターに寄せられた。

   契約時に75万円を支払ったという別の男性(20歳代)は、利益がないので返金を希望している。当初、販売する電気製品を低価格で卸してくれるという話だったが実際には卸値が高く、他の店の販売価格よりも高額になって売れない。契約書には卸価格の記載はなかったという。

   こうした被害は全国に広がっている。埼玉県消費生活支援センターには、「月に15万円は儲かる」と事業者に勧められて120万円の契約金を支払ったが、数か月経っても売れないという相談が寄せられている。大阪弁護士会は2009年5月13日に被害者電話窓口を開設したところ、40件の相談があった。

   こうした問題に詳しい行政書士の小川浩樹さんは、


「ここ3カ月間、ドロップシッピングの相談が他のジャンルに比べて目立って増えています。被害額は10万円から200万円までと幅広く、ホームページ作成や検索エンジン最適化(SEO)のためと説明されて大金を支払ってしまうケースが多いです。業者は契約時に月20、30万円儲かるという話をするようですが、収益モデルに根拠がなく、いい加減なものですよ。商売に疎い人が引っかかりやすい」

   といっている。

   すでに払った契約金を取り返すのは至難の業だ。事業主として契約するので、消費者を対象にしたクーリングオフを適用して解約に持ち込むことが困難なためだ。詐欺会社であったとしても、内容証明程度では返金されないケースが多く、結局、訴訟を起こすしか解決策がないというのが現状だ。

契約金を要求された時点でおかしいと疑うべき

   ドロップシッピングはサイトの運営者が在庫を持たずに商品を販売する方法で、アメリカで広がり、日本では05年からサービスを提供する業者が出てきた。商品管理、発送、代金決算などは業者が行い、サイト運営者はレイアウトや商品説明を考えたりする。商品が売れたら、販売価格と仕入れ値の差額分がサイト運営者の懐に入る。ネットショップを出すのと違って、在庫を抱えなくて済むというメリットがあり、不況下で副業として手を出す人が急増した。

    そこを逆手に取った悪質業者が増えている。「ドロップシッピング」で検索すると、「月商800万円稼げる」「1日15分から稼げる」とうたう業者がたくさんヒットし、しかも「ヤフー」や「グーグル」のスポンサーサイトとして載っている。

   ある業者は複数のプランを用意していて、契約の際に数十万円から200万円の契約金を取っている。ホームページの作成や検索エンジン最適化(SEO)などの費用だと説明されている。この業者にJ―CASTニュースが問い合わせたところ、担当者は結局、取材に応じなかった。別の業者は、「担当者が不在でいつ戻るかわからない」の一点張りだった。

   迷惑を被っているのは、消費者だけではない。

   ドロップシッピングの草分けで30万人の会員を誇る、もしも(東京都渋谷区)の実藤裕史代表取締役は、

「基本的にドロップシッピングは無料で、契約金を要求された時点でおかしいと疑うべきだと思います。大阪弁護士会や東京都消費生活センターと連携して、悪質業者への警告を行っていますが、知識がない人ほど被害者になりやすく、被害が後を絶たない状況です。スポンサーサイトとして掲載しているポータルには、掲載を控えるようお願いしていますが、聞き入れてもらえません。これだけ被害が出て問題にもなっていますし、引き続きお願いしていきます」

   といっている。

   業界団体、日本ドロップシッピング協会では近日中に行われる総会で、認証制度を設けて優良業者を明確にすること、被害者相談窓口を設けることを議題として提出し、09年11月からの実現を目指している。