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橋下知事に「『お前』メール」 府職員に100人もいる!

   大阪府の橋下徹知事が全職員に宛てたメールに対して返信した内容が「一般常識を逸脱している」として、40代の女性職員が、口頭で厳重注意処分を受けた。橋下知事は「これは、あり得ない」「公務員組織は、ちょっとずれている」と怒りが収まらない様子だが、実はもっとひどいものもたくさんあるのだという。

「それなりの職についている人間の文章とも思えませんが」

   発端は、2009年度末に完成する予定の「紀の川大堰」(和歌山市)の事業から、大阪府が撤退を決めたことにある。この事業は国が1987年に着手。当時の水需要予測では、大阪府で水不足が予想されていたことから、同大堰から1日2万トンを取水する計画になっていた。ところが、その後の需要予測では、需要が大幅減。同大堰を利用しなくても需要が容易にまかなえることが判明したことから、府は事業からの撤退を決めた。総事業費1028億円のうち、府がすでに負担した約380億円が無駄になる形だ。

   橋下知事は、府の幹部が9月30日の府議会で、撤退の経緯について説明する様子が不満だったようで、10月1日夜、全職員に対して、公金に関する意識を改めるように求めるメールを送信。このメールが、今回の騒動の引き金になった。内容は、こうだ。

「どうも税金に関して、僕の感覚と、役所の皆さんの感覚は違います。昨日の議会答弁、水需要予測の失敗によって380億円の損失が生まれたことに関しても恐ろしいくらい皆さんは冷静です。何とも感じていないような。民間の普通の会社なら組織挙げて真っ青ですよ!!(中略)それよりも、皆さん、380億円の損失って、何にも感じませんか?何があっても給料が保障される組織は恐ろしいです・・・・」

   これに対して、10月2日になって、女性職員がメールを知事に返信。文面では、

「このメール配信の意味がわかりません。愚痴はご自身のブログなどで行ってください。メールを読む時間×全職員の時間を無駄にしていることを自覚してください。また、文も論理的でなく、それなりの職についている人間の文章とも思えませんが」

と、橋下知事を罵倒する一方、事業撤退の決定についても、

「380億の投資を行うことを決断したのは誰ですか?投資なら、損益を十分考えて行ったわけでしょうから、今回の責任は決断した人にあるべきです。『やめ逃げ』はずるいです」

と、「やめ逃げ」と非難した。なお、府が事業から撤退しなかった場合、少なくとも年間2億円の維持管理費を負担しなければならなくなる。

知事に「お前の考えていることはおかしい」

   さらに、メールの最後には、知事からのメールの「何があっても給料が保障される組織は恐ろしいです」とのくだりを引用し、

「こんな感覚を持つ人が知事であることの方が私は恐ろしい」

と、再び知事を罵倒した。この約7時間後、知事は女性職員に対して

「まず、上司に対する物言いを考えること。私は、あなたの上司です。その非常識さを改めること。これはトップとして厳重に注意します。あなたの言い分があるのであれば、知事室に来るように。聞きましょう」

と、メールで「警告」。このメールに対しても女性職員は反発し、

「こんなにたくさんメールが送りつけられること自体、私には未知の経験で、恐怖に感じています」
「知事室にお呼びとあらば、公務をどけてでもお邪魔いたします」

などと返信。さすがに知事も堪忍袋の緒が切れた様子で、人事担当者に

「彼女の仕事自身も、知事の指揮命令権の中に入っていることすら認識になさそうです。知事と職員の関係から、きちんと説かなければならないようです」

などして、処分を検討するように指示。職員と直属の上司を、府の内規に基づく「厳重注意」にした。

   知事の怒りは、処分を明らかにした10月8日の囲み取材の場でも爆発。

「一般常識を逸脱している」
「これはありえない」

などとまくしたて、記者に対して

「どうなんですかね。こんなもんなんですか?『愚痴はブログで言ってください』とか社長に言うことは。言えます?『メールを読むのは時間のムダだ』って(社長に)言えます?」

などと問いかけた。また、

「もっとひどいのも、いっぱいあるんですよ」

と切り出すと、記者からは苦笑いが漏れていた。

「『お前』というのも頻繁にあります。『お前』って、社長とかに言えますかね?『お前の考えていることはおかしい』って」

   今回処分された職員は反省しているというが、「『お前』メール」を送信する職員は100人程度いるとのことで、知事の怒りが収まることは当分はなさそうだ。