2024年 4月 24日 (水)

枝川二郎のマネーの虎
日本は世界の「笑いもの」 銀行に返済猶予無理強いさせるな

   亀井静香郵政改革・金融担当大臣の発言の数々が多くの人の失笑を買っている。極め付きが「中小企業等への融資の返済を3年程度猶予する(モラトリアム)」という政策だ。これには驚きを通り越して、あきれ返ってしまった。強気の亀井大臣だが、このような政策を許しては、日本の金融システムひいては経済全般が悪影響を受ける可能性が高い。

そもそも「貸し渋り」とはなにを指すのか

   「中小企業への貸し出しの返済猶予」というような政策は一見好ましいように思える。しかしそのような政策をとることで、実はさまざまな副作用が生じる可能性がある。経済の仕組みは「風が吹くと桶屋が儲かる」みたいなところがあって、巡り巡ってどこでなにがプラスに、あるいはマイナスに働くか非常にわかりにくいのだ。

   今回の提案では「銀行経営に対して悪影響があるのでは」と心配されているが、予想される影響はそれにとどまらない。株式や国債の価格といったことから雇用や財政状況に至るまでの、ありとあらゆるところに悪影響が及ぶし、日本に対する海外の評価も急落するだろう。

   提案の理由を、亀井大臣は「金融機関の貸し渋りがひどいため」と説明する。しかし、そもそも「貸し渋り」とはなにを指すのか。もし銀行が「きちんと返済できそうな企業にカネを貸さない」のであれば、それはビジネスチャンスをみすみす失うわけだから、銀行が無能ということだ。いまはほとんどの銀行が「カネ余り」の状態にあり、優良な貸出を増やしたいと頑張っている状況である。積極的に「貸さない」ことがあるだろうか。

   百歩譲って、本当に貸し渋りが問題だとしよう。その場合は、貸し渋りとは何かを定義し、その問題点を具体的に検証し、今後どうすれば貸し渋りを止められるかを検討する、という手順を踏むべきだ。「既存のローンの返済猶予」というような稚拙な対症療法では将来の貸し渋りを助長するだけだ。一方で、「貸し渋り解消」の名のもとで返済がおぼつかない企業にまで貸せというのは論外であること言うまでもない。

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