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自民総裁会見もオープン化 谷垣氏「熟慮したわけではない」

   これも政権交代の影響なのか、自民党の総裁会見がオープン化された。谷垣禎一新総裁の定例記者会見には、記者クラブの加盟社にまじってフリーランスや雑誌の記者が参加し、その模様はネットで生中継された。しかし「質問はクラブの記者が先」と平等ではなく、オープン化についての谷垣総裁のコメントも頼りないものだった。

   総裁に就任して初めての定例会見は2009年10月14日、自民党本部の4階会見場で開かれた。これまでは「自民党総裁=首相」だったこともあり、会見は原則として記者クラブ向けだったが、今回からオープンにすることが明確にされた。

「クラブ以外のメディアにも入っていただく」

パソコンで一心不乱にメモする記者たちに語りかける谷垣禎一総裁
パソコンで一心不乱にメモする記者たちに語りかける谷垣禎一総裁

   会見の冒頭、茂木敏充報道局長が

「今回から毎週、定例の会見を開いていきたいと思います。平河のクラブ(自民党記者クラブ)のみなさんにも加えて、希望のあったメディアにも入っていただくという形で会見を進めたいと思います」

とあいさつした。自民党による「総裁会見オープン化」の宣言だった。会見には、夕刊紙や週刊誌、ネットメディアの記者も参加。動画サイトのニコニコ動画は会見の模様をネットで生中継した。あるフリーのジャーナリストは、

「以前の自民党に比べると、入り口の警備員の対応がやさしくなった。前は身分証を見せろとかうるさかったけど、今回はそんなこともない。やっぱり野党になると態度も変わるということだね」

と、自民党の変化を歓迎していた。自民党本部の報道担当者によれば、これまでもクラブ以外のメディアの希望があれば参加を認めていたというが、はっきりと「オープン化」を宣言した意義は大きい。

   ただ、記者クラブへの配慮か、質疑応答の際には茂木報道局長から、

「まず、平河クラブの加盟社の記者から(質問を)お願いします。そのあと、それ以外の方からもお願いします」

という注意があった。記者クラブとそれ以外のメディアの「見えざる壁」は、完全に取り払われたわけではなかったのだ。

「今までは慣行に従っていただけ」

   民主党政策への評価など、クラブ加盟社の質問が10個ほど続いたあとで、フリーランス・ライターの畠山理仁さんが、記者会見開放について3つ質問した。

「(1)今回の総裁の記者会見を平河クラブだけでなく、希望するメディアにも開放するということの狙いはどこにあるのか。(2)外務省と金融庁が大臣会見をフリーランスのメディアにもオープンにしているが、自民党政権下ではオープンにできなかった理由は、どこにあるのか。(3)そして、オープン化についてどのように評価しているのか」

   この質問に対する谷垣総裁の答えは、他の回答に比べると極端に短く、実にあっさりしたものだった。

「3つお聞きになりましたが、1つずつ個別に答えられるほど、私は熟慮したわけではありません。言えることは、今までは慣行に従っていたということじゃないでしょうか。それにつきると思います。もう少し来てくださる方の幅も広げ、私どもの発信先も広げたい。こういうことにつきます」

   会見の冒頭で茂木報道局長が「会見のオープン化」を宣言しているのだから、「記者会見オープン化」の質問は予想されてしかるべきだが、谷垣総裁は不意をつかれたようだ。畠山さんは「あまりにも簡単で、あれっという感じがした」と言いながら、感想を語った。

「会見をオープンにしてこなかったことについて、『慣行に従ってきただけ』という一言で終わってしまい、消化不良な印象でした。『熟慮したわけではない』と言っていましたが、本当に考えたことがなかったんでしょうね。国民政党として再生しようというのなら、当然こういうことも考えているのかなと思っていたんですが……。今度質問したときは、もう少し長く答えてほしいですね」