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ANAとの提携カード
これを「入口」にすそ野広げていく
AMEX中島好美副社長に聞く

   一人で何枚もカードを所持していることはもう珍しくない。しかも、世界的な景気悪化の影響で、消費が冷え込んでいる。そうした中で、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル(AMEX)と全日本空輸(ANA)が提携カードを発行する。カードと航空の巨人同士の提携。日本の業界を揺さぶる出来事だったのは間違いない。今回の狙いは何か、日本で今後どんな戦略を展開していくのか。AMEXの中島好美副社長に聞いた。

――今回、ANAと提携しました。まず、その狙いを。

中島 今はまず、AMEXを知ってもらうこと、使ってもらうことが大事なんです。ANAとの提携カードはそのための強いツールになります。
   年会費は一般カードで5250円。当社が発行しているカードの中では一番安くなっていて、AMEXの「入口」の商品と位置付けています。そこから、だんだんカード会員のすそ野を広げていく。その第1弾がANAとの提携カードといえます。
   一般の方にはわかりづらいのですが、提携カードではどこが発行会社であるかによって、カードの個性が現れます。今回のANAアメリカン・エキスプレス提携カードは当社が発行会社になっています。カード会員は海外も含め、AMEXが有するネットワークや、AMEXが提供するさまざまなサービスを受けることができます。発行会社としてこれほどの規模の提携カードは、実質的に日本では初めてです。今回の提携の重要性がここにも表れています。

 ANAの利用客にとって「最強カード」

中島副社長は「もっとAMEXのことを知ってほしい」という
中島副社長は「もっとAMEXのことを知ってほしい」という

――カードの特徴を教えてください。

中島 ANAの利用客にとって「最強のカード」になります。100円で1ポイントが貯まり、ANAアメリカン・エキスプレス提携カードで貯まったポイントは1000ポイント(=1000マイル)単位でANAマイレージクラブのマイルに移行でき、これでANAの特典航空券やアップグレード特典などに交換できます。ANA航空券の購入などで利用すると、ANAアメリカン・エキスプレス提携カードで通常の1.5倍(100円=1.5ポイント)、ANAアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」の場合は通常の2倍(100円=2ポイント)のポイントが貯まります。入会時のボーナスポイントのほかに、マイレージプレゼントを貯めていけば、国内旅行の往復航空券くらいのポイントはすぐに貯まるでしょう。また、急な出張などで旅行をキャンセルした場合の損害を補償する「キャンセル・プロテクション」(年間上限10万円)といった、AMEXならではの付帯サービスもゴールドなら使えます。

―― AMEXは今後日本でどんな戦略を展開していくのですか。

中島 いま日本人のクレジットカードの平均保有枚数は、一人あたり3枚程度といわれています。しかしながらカードの利用率は、米国に比べるとかなり少ない。日本はまだまだ現金社会です。クレジットカードの利用を高めていくことは十分可能だと思っています。
   当社は日本では「プレミアム・セグメント」という戦略を敷いています。経済的にも安定し、年会費に見合ったサービスに価値を見いだす方々を対象にする、といった意味です。従って、必ずしもAMEXカードは、利用者が使う最初のカードではないのかもしれません。年会費を払い、納得していただいてご利用いただく中で、AMEXの価値を認識していただく。そして良さを分かっていただく。そんなカードです。
   一人あたり3枚程度のクレジットカードでも、どの買い物に、どのカードを使って、どこに何ポイント貯まっているのか、忘れてしまう。そして、ポイントが失効する。そんな経験が結構あるはずです。いちいち気を遣いながら使うよりも、1枚のカードに集中して賢く使う。そんな使い方をAMEXは提案しています。
これまでAMEXカードはどちらかというと高級カードと見られ、高額な商品を買う人向けのカードと見られていましたが、現在は利便性に富んだカードです。加盟店では、2001年からジェーシービーと提携していますので、カードが使えるお店も増えています。おおげさに言うと、1円から使ってください、という感じですね。今、「いっぱいのコーヒーからでも使ってください」というキャンペーンを推進しています。

 海外に強く、事故対応も素早いのが魅力

―― AMEXカードの魅力はどこにありますか。

中島 いろいろあるのですが、まず海外に強いカードだということ。海外旅行の機会が多い方ほど使い勝手のよさを実感していただけるはずです。商品を購入したときの補償、カード紛失時の対応、手厚いトラベルサービスなども強調したいですね。緊急時のコールセンターへのつながり具合などは、どこよりも早いと自負しています。
   また、当社にはお客様を守る責任があります。事故や不正利用でお客様に被害が及ばないように日頃から注意を払っています。たとえば海外で変だ、と思われる利用があったとします。すぐにお客様に電話を入れて、カードの使用履歴などを確認させていだたきます。事故を未然に防止するため、国内外を問わず、できる限り素早い対応を心がけています。

―― 最近は年会費無料を打ち出しているカードがあります。とりわけ若い人にとって年会費は負担になりませんか。

中島 カードを利用する人はどこに価値を見出すのか。これがポイントです。マイレージだったり、旅行先でのサービスだったり、各種の保険に対してかもしれない。そのどれでもいいのです。何かのサービスに満足いただけたら年会費を払ってでも、そのカードは使っていただける。若い人でも同じですね。

―― 今後も、提携カード発行に積極的に取り組む?

中島 カード会員のすそ野拡大のため、提携カードの発行は今後も考えていきます。提携はお見合いみたいなものですが、相手に選んでもらえるよう、AMEXのブランド力、質の高い商品やサービスに磨きをかけていくことが重要になります。

中島 好美(なかじま・よしみ)

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc 個人事業部門 マーケティング担当 副社長

   1980年早大法学部卒、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入行。その後、ディスニーホームビデオジャパン、電通ワンダーマンダイレクト、シティバンクN.A.個人金融本部、ソシエテ・ジェネラル証券を経て、2002年にアメリカン・エキスプレス・インターナショナル入社。トラベラーズチェック部門のヘッドを務めた後、社内公募制度にチャレンジし、03年から現職。

   プライベートでは早朝ウオーキングを欠かさず、1日1万5000歩を心がけている。東京都出身。