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勝間和代「リフレ論」が大反響 ネットで賛否両論が渦巻く

   通貨の大量発行でデフレを克服する「リフレーション」を政府に求めた経済評論家、勝間和代氏(40)のプレゼンテーションが、ネット上で大反響を呼んでいる。リフレ擁護派から反対派まで、ブログなどを通じて議論が大盛り上がりなのだ。

「それにしても勝間和代氏の影響力の大きさにびっくり……」

デフレ克服した高橋是清蔵相の影響?

勝間和代氏がプレゼンを報告
勝間和代氏がプレゼンを報告

   経済学者の飯田泰之氏は、自らのブログで2009年11月9日、こう驚いてみせた。

   影響力のきっかけになったのが、政府が勝間氏から意見を聞いた5日の「マーケット・アイ・ミーティング」だ。勝間氏は、そこで菅直人国家戦略担当相に対し、雇用改善のために、大胆なデフレ克服策を訴えた。日銀が大量の国債を買い取ることで、通貨発行量を大幅に増やしてインフレを呼び込むというものだった。

   このプレゼンに先立って、勝間氏は4日、よく利用しているツイッター上で、政策への署名を募った。特設アカウントをフォローしてもらう形で募り、わずか1日で2300人以上もの署名が集まった。分かりにくい金融政策について、多くの人からこれだけの関心を集めるのは異例だ。

   前出の飯田氏は、こうした動きをブログで取り上げ、専門家を超えて関心を集めたことに対し、歴史的な政策転換への出発点となるのではないかと指摘した。この問題では、飯田氏へも主要紙2紙と雑誌3誌から取材依頼があったといい、「ここ数日、ネットはもとより雑誌・新聞等でも金融政策についての関心が急激に高まっており,望ましい限りです」と述べている。

   勝間氏がこの大胆な政策を考えたのは、1929年の世界恐慌後に、同様な政策で深刻なデフレを克服した高橋是清蔵相の影響もあるらしい。実際、ツイッター上の特設アカウントには、是清の肖像写真のアイコンが使われている。

   当時の日本の経済学者たちは、イメージの悪いインフレ誘導という表現を嫌い、リフレーションという用語を多用した。最近は、物価上昇率の目標を定める、一種のインフレターゲット論だと受け止められている。勝間氏のプレゼン内容は、「現代版リフレ論」とも言え、カツマー、勝間バブルと呼ばれる人気もあり、ネット上で関心を集めている。

内閣府「なかなか現実的には難しい」

   大胆な政策だけに、勝間和代氏のリフレ論は、ネット上でも賛否両論が極端に分かれている。

   賛成派としては、駒澤大学准教授でもある前出の飯田泰之氏がおり、自らのブログでリフレ論の立場を明らかにした。デフレ脱却のために金融政策方針の転換が必要であり、2%程度の安定的なインフレを目指す政策を実施すべきと説いている。

   同じ経済学者で上武大学教授の田中秀臣氏は、自らのブログで2009年11月6日、高名なエコノミストが「勝間和代が日本を救う」と評したことに「こころのどこかで僕もそう思っている」と告白した。勝間氏のプレゼンの水準は高く、直接聞く者に届くとして、「政府が選択肢に加えてくれたことを本当に願いたい」とまで書いた。

   一方、反対派は、その批判もかなり激しい。経済学者の池田信夫氏は、自らのブログで7日、「ゼロ金利状態でいくら通貨を供給してもインフレが起こらない」と主張した。「リフレ派が久々に墓場からよみがえったようだ」としたうえで、「これが国家戦略に影響を及ぼすとなると放置できない」とまで言い切っている。

   アメリカの投資銀行に勤めている藤沢数希氏は、自らのブログで9日、「勝間さんのインフレ政策を実行するともっとデフレになる」と批判した。日本は少子高齢化で潜在成長率が低くなっており、結果的に低金利になって通貨を大量発行しても物価の下落は抑えられないというのだ。

   勝間氏のプレゼンについては、新聞各紙は、菅国家戦略相が納得しなかったなどと報じており、内閣府の担当者も、「貨幣の価値が大きく下がったりするリスクがありますので、なかなか現実的には難しいかもしれません」と明かす。しかし、勝間氏は、施策の可能性に手応えを感じているとして、公式ブログで6日、「プレゼン後の感想でも、菅大臣から『興味ある。どうしようかな』という発言があった」などと書き込んでいる。