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次世代スパコン開発「異議あり」  ホリエモン「自分の稼いだ金でやれ」

   政府の行政刷新会議の「事業仕分け」で、事実上の凍結となった次世代スーパーコンピュータ「京速計算機」を巡って、ホリエモンこと堀江貴文さんが、こうした開発費用を政府に頼るのをやめ、「自分たちの稼いだ金でやれ」と提言し、注目を浴びている。

 

   行政刷新会議は2009年11月13日、10年度予算概算要求の無駄を判定する事業仕分け3日目で、文部科学省が官民共同で勧めている次世代スパコン開発を「限りなく予算計上見送りに近い縮減」と判定して事実上の凍結にした。

「世界一でなくていい」「必要性を見直すべき」

   次世代スパコンは、1秒間に1京回の演算性能を持つ世界最速のスパコン「京速計算機」を目指して06年から独立行政法人の理化学研究所と、富士通、日立製作所、NECが共同で開発をスタート。多様な分野に応用できる汎用型という触れ込みで、12年度に本格稼働する予定だった。完成すれば現在世界最速とされる米国製の10倍の速度になるが、開発には総額1230億円が必要で、10年度概算要求でも約267億円を要求。

   行政刷新会議では、「世界一でなくていい」「必要性を見直すべき」などの意見が相次いだ。理化学研究所の理事長で、ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏は「スパコンなしで科学技術創造立国はありえない」と憤っていたという。

   これに対しホリエモンも11月14日と16日、「政府に頼るのをそろそろやめないか」というタイトルでブログを書いている。

   そもそも「補助金なぞを当てにして仕事をしたり研究をするという感覚が全然理解できない」。もともとは国民の税金なのだから「文句を言われたくなければ、自分たちの稼いだ金でやればよい」という考えだ。

   さらに、日本の研究機関・大学は、自分たちの研究の事業化に稚拙であると指摘する。事業で得た利益を研究にフィードバックする仕組みができていないために、大学教授は研究費の獲得に汲々としなければならない。

   ではどうすればいいか。ホリエモンが引き合いに出すのが、当の理化学研究所が戦前形成していた「理研産業団」という組織だ。理化学研究所の発明を、そのまま研究所自身で製品化する組織で、1939年の最大時で会社数63、工場数121にも及んだ。ビタミン剤を始めとした製品を次々と事業化し、理化学研究所はそこで得た利益を研究予算につぎ込んでいたことから「研究者の楽園」と言われていたという。

京速計算機は「ビジネス的な意味もない」

   ホリエモンはこれを見習い、

「大学や研究機関なら儲かる応用研究分野がスピンアウトして出来た株式会社の上場益を、その出自の研究機関や大学に還元できる仕組みを作ればいい」

と提言している。

「世界一有名な科学者に与えられる賞。ノーベル賞のもともとの資金源になったのはノーベルがダイナマイトで儲けた金だ。補助金じゃないぞ」

   以前から京速計算機を「時代錯誤の戦艦大和」と批判してきた経済学者の池田信夫さんも11月15日のブログで、問題点を指摘している。

   まず、そもそも予定している性能が実現できるのかどうか疑わしいという。09年5月にNECと日立が経営環境の悪化を理由に共同開発から撤退している。実績に乏しい富士通が単独で設計をやり直しても、目標としている性能が「2年で実現できるとは思わない」。

   また、スパコンは世界で年間数十台しか売れない。そのうえ完成しても高額で、売れそうにない。国内の大学でも、中規模のスパコンをリースで利用するのが一般的で、京速計算機は「ビジネス的な意味もない」としている。