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NEC、新世代スパコン撤退で 文科省「賠償請求」方針

   「2位ではダメなのか」という仕分け人の言葉が波紋を呼んだ次世代スーパーコンピューター(スパコン)の開発だが、実は「仕分け」以外でも大きな曲がり角を迎えている。スパコン開発は、理化学研究所(理研)を中心に産学協同で行われてきたプロジェクトだが、3社いた民間企業のうち2社が経済情勢を理由に撤退。計画の見直しを強いられることになり、撤退した企業に損害賠償を請求する方針だというのだ。

   次世代スパコンは、総額1150億円を投じて、神戸市中央区のポートアイランドに建設。2010年度末から稼働させる計画になっていた。

撤退条項は入れていなかった

   計画では、NEC・日立グループが気候変動予測に強い「ベクトル型」と呼ばれる形式を、富士通は遺伝子解析などに向くとされる「スカラー型」と呼ばれる形式を担当することになっていた。ところが、09年5月になって、NEC・日立グループが業績不振を理由に事業から撤退を表明。仮にNECのグループが次世代スパコンの製造段階まで踏み込んだ場合、100億円以上の資金負担を余儀なくされるとみられたことから、撤退を決断した模様だ。

   言うまでもなく、この撤退が計画に与える影響は大きく、理研の野依良治理事長は、7月15日に神戸市内で行った講演で、NEC・日立の名指しは避けたものの、両社の撤退について

「国家の基幹技術を築く事業に、大きな衝撃を与えた」

と怒りをぶちまけ、理研の所轄官庁である文科省は、富士通方式に絞る形の計画見直しを余儀なくされた。

   この撤退の経緯が、09年11月13日に行われた行政刷新会議の「事業仕分け」でも話題になった。仕分け人の蓮舫参院議員が

「(NECとの契約に)何らかの撤退条項は入れていたのか」

と聞くと、文科省の担当者は

「そのような形では入れていなかった」

と答弁。

「理研とNECとの間の問題」と文科省

   蓮舫議員が

「そうなると、これまで(NECに対して)国費でお渡ししていた部分は、今後どうなっていくんでしょうか」

と詰め寄ると、文科省担当者は

「NECの撤退についてどうするか、例えばプロジェクト上の全体の損害等の問題等について議論をしている。『撤退を認めるかどうか』という点については、(文科省の)評価委員会でも『(富士通方式の)スカラー型単独で当初の目的を達成しうる』と判断があり、理研からもそのような変更案が上がってきたので、撤退を認めた。あとは損害賠償の問題と考えている」

と撤退の経緯を説明。蓮舫議員が

「損害賠償を起こされるんですね」

と念を押すと、文科省の担当者は

「はい、今、あの、そのように準備をして…今準備中でございます」

と、若干しどろもどろになりながらも、NECに対して損害賠償請求を行う方針を明言した。

   産学協同のプロジェクトで、政府側が民間企業に対して損害賠償を求めるのは異例の事態だとも言えるが、担当セクションにあたる文科省研究振興局情報課では、

「(損害賠償請求は)理研とNECとの間の問題なので、こちらからお話しする筋のものではない。ただし、担当者同士で(賠償請求の時期や規模について)検討が進んでいることは承知している」

としており、実際の訴訟に発展するのは、もう少し先のことになりそうだ。

   一方のNECのコーポレートコミュニケーション部では、

「現段階でコメントできることはない」

と話している。