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深刻な雇用悪化 卸売・小売業がガタ落ち

   雇用環境の悪化は深刻さを増している。総務省が2009年12月25日に発表した労働力調査によると、11月の完全失業者数は331万人と1年前に比べて75万人増加で、13か月連続で増えた。勤務先の人員整理や倒産などで失業した「勤め先都合」は49万人増、「自己都合」は7万人増えた。就業者数は131万人減って6260万人となり、22か月連続でマイナスとなった。

   製造業中心だった雇用調整が非製造業にも波及。デフレによる値下げで卸売・小売業の業績も悪化してきたため、就業者数が大幅に減少した。卸売・小売業はこれまで、製造業からの離職者の受け皿となってきたが、その「機能」も失われつつあるようだ。

若者の雇用は1.4ポイントも悪化

   産業別の就業者数をみると、製造業が1063万人でこの1年間に74万人減った。卸売・小売業は45万人減の1023万人。サービス業が9万人減って474万人。このうち、職業紹介・労働者派遣業は9万人減の108万人となった。

   11月の完全失業率は5.2%で、前月と比べて0.1ポイント悪化した。男女別の失業率をみると、男性が5.4%で10月との比較で0.1ポイント悪化。女性も4.9%で0.1ポイント悪化した。若者の雇用も深刻。15歳~24歳の完全失業率(原数値)は8.4%と、1年前に比べて1.4ポイントも悪化している。

   総務省は「リーマン・ショック後の景気の落ち込みから、製造業の労働力の過剰感は拭えない。小売業などはデフレの影響で先行きが不透明なことから、雇用情勢は厳しい」としている。

   一方、厚生労働省が同日発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は0.45倍で、前月よりも0.01ポイント上昇して、3か月連続で改善した。ただ、新規求人(原数値)は前年同月比で13.8%減少。これを産業別にみると、情報通信業(36.1%減)、宿泊業・飲食サービス業(25.0%減)、卸売・小売業(16.6%減)が大きく落ち込んでいる。

愛知県や群馬県などで有効求人倍率が悪化

   内閣府の「地域の経済 2009」は、製造業の依存度が強い愛知県や群馬県などの地域で有効求人倍率が悪化していると指摘。これら地域は自動車関連が経済のけん引役で、最近はアジア向け輸出の持ち直しでやや回復しているが、「自律性に乏しい」としている。

   08年冬に問題になった非正規労働者の雇い止めについて地域別の傾向をみると、東海地区が6万7000人と、全国の27.4%を占めた。

   厚生労働省の「非正規労働者の雇止め等の状況」(速報値)によると、12月16日時点で解雇や契約期間の満了などで職を失った非正規労働者数は25万291人いる。

   さらに、08年10月から09年12月までに解雇や雇い止めにあった人(予定を含む)22万7757人のうち、住居の喪失状況が判明している人は13万9892人で、このうち住まいを失った人は3488人(2.5%)いることがわかった。

   政府は12月24日、鳩山首相を本部長とする緊急雇用対策本部の貧困・困窮者支援チームの会合を開き、緊急雇用対策として全国136の自治体で年末年始の生活相談を受け付け、就職あっせんや生活相談、住居や食事の提供の体制を整えることを明らかにした。

   鳩山首相は「年越し派遣村が繰り返されてはならない」と述べたが、数字のうえでは雇用情勢に明るさは見えない。