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「22万非正規社員を正社員に」 郵政亀井プラン本気なのか

   郵政事業民営化見直しの素案が2010年2月8日、政府から発表された。経営形態を3社体制に再編するなど郵政事業を大きく方針転換する内容だが、注目されるのは、そのなかに「高い非正規雇用率の改善」という項目が入ったことだ。陣頭指揮をしてきた亀井静香郵政・金融相は記者会見で「22万ぐらいの非正社員がいるが、基本的に希望者は正社員としての雇用形態をとっていく」と明言した。しかし異論も強い。

亀井担当相が斉藤社長に「正社員化」を提言

郵政民営化見直しの素案を発表する亀井静香郵政相(右)と原口一博総務相
郵政民営化見直しの素案を発表する亀井静香郵政相(右)と原口一博総務相

   亀井担当省は「素案」の概略を発表した記者会見で、雇用形態の見直しについて触れた。

「いま22万ぐらいの非正社員が、実質的には正社員と同じような仕事をしている人も含めてパートというような形で存在しているが、基本的には、『正社員として継続として働きたい』という人については正社員としての雇用形態をとっていく」

と述べ、非正社員の正社員化を推進していく意向を表明。この問題は「郵政改革素案」のなかに、次のような抽象的な表現で盛り込まれた。

「日本郵政グループの社員の雇用状況について、非正規社員の比率が高く、給与水準が低いこと等が、社員のモチベーションや安定的なサービス提供の面で問題となっているとの指摘が聞かれる。こうした状況を放置することは、『政府の国民に対する責務』を果たす業務を担う『公益性の高い民間企業』のあり方として一考の余地があることから、日本郵政グループに対して、状況の把握と改善に早急に取り組み、安定した雇用環境の中で社員が適切に業務を遂行し得る環境をつくることを求める」

   つまり、日本郵政に対して「改善を求める」ということで、いきなり非正社員の正社員化を法律で義務づけるような措置はとらないというわけだ。素案の作成を担当した大塚耕平副大臣も

「現時点での認識では、雇用の問題は『法制度の問題』ではなく『経営上の問題』だと考えている。現時点ではあくまでも経営上の問題として、亀井大臣から斉藤社長に『しっかり状況を把握して、改善努力をするべきではないか』と申し上げているところだ」

と話している。

   ただ、亀井担当相はかなり本気なようで、記者会見では、非正規雇用が広がったここ10年の経済界の雇用状況を批判しながら

「新しい出発に際してきっちりしていきたいと考えている」

と語った。

「企業経営がいかにめちゃくちゃになるかを示す社会実験」

   亀井担当相が「日本郵政従業員の正社員化」に言及したのは、これが初めてではない。2月5日の衆院予算委員会で

「郵政改革の大きな柱として、希望者は原則正社員とする」

と発言していた。しかし、新聞報道によれば、日本郵政グループの幹部から「コスト増につながる」との声が出ており、「今後の経営環境は厳しくなっていく」(大塚副大臣)という日本郵政の経営をさらに圧迫するのではないかという懸念も強い。

   国会での発言が報道されると、2ちゃんねるでは、

「亀井は神!!!!!!!!!」

と歓迎するカキコミの一方で、

「日本郵政も日本航空の道だな、あーあ」
「企業にそんな体力ないだろ・・・」
「コスト増につながるとかそういう生易しいもんじゃなくてコスト爆増だよね」

といった批判的な意見が多数寄せられた。経済評論家の池田信夫さんもツイッターで、

「これは民主党の『一段階論理の正義』を実行したら、企業経営がいかにめちゃくちゃになるかを示す社会実験」

と否定的なコメントを公開した。そのような批判も考慮したのか、亀井担当相は8日の記者会見では

「ただ、業種によっては、パート的なものしか置かないものもあるかもしれない」

と留保条件をつける姿勢も見せている。人事コンサルタントの城繁幸さんもツイッターで

「亀井さんは古い調整型の政治家なので、最初にぶちあげといて色々条件を付け絞り込むんだろう」

と「完全な正社員化」には懐疑的な見方を示す。約22万人いる日本郵政の非正社員のうち、いったいどれだけが正社員になれるのかは全く分からない。