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ゼンリン出版不況に「挑戦」 全国で無料タウン誌発刊

   出版不況で雑誌の売れ行きが急減するなか、地図情報のゼンリンが地図情報マガジン「Actiz mi-ru-to(みると)」を発刊する。2013年3月期までに全国300か所の市・区で展開する強気の計画をたてている。

   該当する地域の全戸にポスティングする無料のタウン情報誌で、生活情報として需要の高い「医療」や「自治体」「防災」「買い物」「学び」の情報をベースに、地図とリスト、記事で構成する。地域活性化に貢献する1冊をめざす、としている。

雑誌、パソコン、モバイルに電子書籍とフル活用

出版不況に挑む!(ゼンリンのWEBサイト「アクティズ」)
出版不況に挑む!(ゼンリンのWEBサイト「アクティズ」)

   ゼンリンが発行する地図情報マガジンの「Actiz mi-ru-to(みると)」は、A4版約80ページ建て。発行地域では年1回、更新する。2010年6月に発行する「さいたま市浦和区」「さいたま市南区」「神戸市東灘区」を皮切りに、2013年3月期までに全国300か所の地域(市・区)で展開し、売上高50億円をめざす。

   売り上げはすべて広告費。「みると」は、パソコンサイト「Actiz.jp(アクティズ)」とモバイルサイトの「Actiz.jp mobile」、電子書籍の「Actiz eBook」と連携。ゼンリンは、雑誌で「気づき」を与え、パソコンで調べて、モバイルで行動し、電子書籍で街の情報を持ち歩く、といった具合に「4つのメディア」でユーザーを吸引する。  

   広告を出稿するクライアントは、情報誌「みると」への広告掲載と同時にWEBサイトの「アクティズ」にも情報を掲載できる。地図上に店舗名と所在地、PRポイントなどの概要が表れる仕組みで、情報の更新は店舗自身でもできる。また、モバイルでは所在地までのルート検索機能の搭載も検討中という。

地図と生活情報で「捨てられない」工夫

   ゼンリンは、他のタウン誌との違いをこう説明する。

「記事の8割を詳細な地図で占めていて、プラス生活に密着した情報を掲載しています。駅にある広告ラックで自由に持っていけるのと違い、地域の全戸に確実に届くポスティング方式を採用。また、わたしどもの経験から、どんな家庭も地図は取っておくことも強みと考えています」

   地図と生活情報の充実によって、「捨てられない」工夫を凝らした。発行にあたっては、大手出版社をはじめ多くのタウン情報誌を研究。WEBサイトの運営用ソフトの開発には3億円を費やした。クライアントの確保も「順調です」と話す。

   一方、出版不況は出口が見えない。2010年1月以降に休刊・廃刊した雑誌は、小学館が発行する男性グラビア誌の「sabra」や新潮社の「フォーサイト」、学研の「科学」と「学習」、ベースボール・マガジン社の「格闘技通信」などがある。3月23日には、出版大手の講談社が首都圏や関西圏の若者向けエンターテイメント情報誌として人気を集めた「TOKYO1週間」と「KANSAI1週間」を、売り上げの減少を理由に休刊すると発表した。

   「逆風」の中で、ゼンリンの地図情報マガジンの今後が注目されそうだ。