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東京海上を抜く「MS&AD」 最大の課題は収益力

   三井住友海上グループホールディングス(HD)など3社、損害保険ジャパンなど2社がそれぞれ2010年4月に経営統合し、国内損保業界は3メガ体制に移行する。

   三井住友海上とあいおい、ニッセイ同和が統合する「MS&ADインシュアランスグループHD」は規模で東京海上HDを抜き、国内首位に立つが、利益面では後塵を拝する状態が続く。当初は持ち株会社の下に3社がぶら下がり、コスト削減効果も限定的。規模拡大と経営判断の迅速化を両立できるかが問われそうだ。

利益面でもトップに立つよう号令

   09年3月期の正味収入保険料(売上高に相当)を比較すると、東京海上の2兆1342億円に対し、MS&ADに統合する3社合算は2兆5910億円で、長く損保トップに君臨してきた東京海上と逆転。MS&ADは国内市場のシェア3割超を占める。

   しかし、利益では及ばない。10年3月期の最終利益予想は、東京海上の1050億円に対し、MS&ADはほぼ半分の555億円にとどまる。MS&AD社長に就任する江頭敏明・三井住友海上社長らは、利益面でもトップに立つよう号令をかけるが、社内からは「10年以内に実現できるかどうか」との声も漏れる。

   原因の一つが総資産の開きだ。09年末時点の総資産は、東京海上の約17兆円に対し、MS&ADは約11兆3600億円。これが運用益などに響き、東京海上の優位を決定付けている。総資産は一朝一夕に増やすことが難しく、格差はなかなか縮まりそうにない。

   このためMS&ADは、海外展開の強化や、生保事業の拡大などで地道に利益を積み重ねる方針。海外は中国やインド、マレーシアなどに経営資源を集中させ、部門利益を10年3月期見通しの120億円から、4年後には300億円に増やし、生保は15億円から150億円に育てる計画だ。

   しかし、実現を疑問視する向きもある。中国では、外資系は成長部門の自動車保険を扱えず、インドは出資比率に上限があるなど、参入規制が厚い。国内の生保市場は人口減少で伸び悩んでおり、収益率が高い医療保険も競争が激しい。

江頭社長の本音は「3社合併」

   MS&ADは、統合によるコスト削減効果を新分野への投資に振り向ける考えだが、当面は持ち株会社の下に3社がぶら下がる状態で、削減効果が限られる。あいおいとニッセイ同和が10月に合併するが、中核の三井住友海上の扱いは不透明だ。年間500億円とはじき出したコスト削減効果は、競争力確保ため保険料の引き下げにも充てたい考えで、戦略投資への配分が中途半端に終わる懸念もある。

   江頭社長の本音は「3社合併」と見られるが、あいおいとニッセイ同和には、三井住友にのみ込まれることへの警戒心も強い。このため、法人向けや個人向けなどの機能別に組織を再編する案も浮上しているが、管理部門の効率化にはつながりにくい。江頭社長らは4月以降、組織のあり方について検討を進めるが、統合会社に付き物の意思決定の遅れが表面化すれば、「利益は万年2位」の結果に終わりかねない。