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セカンドライフ「企業利用ゼロ」 土地のレンタル事業大幅縮小

   一時ブームになったネット上の3D仮想空間「セカンドライフ」。過疎化が進んだと報じられたこともあり、日本企業の利用はほぼゼロになっている。このあおりで、国内最大のセカンドライフ事業者が、土地のレンタル事業を大幅に縮小させることになった。

   このセカンドライフ事業者「マグスル」は、仮想空間上のSIM(島)にある土地をレンタルに出したり、セカンドライフを運営する米リンデン・ラボ社が発行する仮想通貨のリンデンドルを販売したりするサービスをしている。

ブログ上で「セカンドライフ事業縮小のお知らせ」

セカンドライフは生き残る?
セカンドライフは生き残る?

   それが、2010年3月31日になって、同社のブログ上で、「セカンドライフ事業縮小のお知らせ」を出した。お知らせによると、セカンドライフでは、企業利用はほとんどなくなり、企業向け土地レンタル事業の収益が確保できなくなったというのだ。

   セカンドライフは、07年初めに日本でも盛んに報道され、ネット上で爆発的なブームになった。京都を模した日本的な街並み「NAGAYA」が人気スポットになり、大手企業も製品PRの仮想店舗を構えたり、仮想社屋を建てて採用活動をしたりした。

   ところが、この年の暮れ近くになって、早くも「過疎化」が報じられる事態に。3D空間に対応できるパソコンがあまりなく、イベントなしには何をしていいかわからないことなどが理由とされた。そして、その余波で、08年になると撤退する企業が相次いだ。

   最近になると、もう企業利用もほとんどなくなり、マグスルでは、「Yurakucho SIM」など5地区を4月30日で閉鎖することにした。リンデン・ラボ社との方針の違いもあったという。今後も、稼働率が60%を下回る場合は、順次閉鎖していく。

   とはいえ、セカンドライフ自体は、根強いファンがいて、世界的に個人ユーザーは増えていく傾向にあり、リンデン・ラボ社もすでに黒字化を達成したという。日本では現在も、個人ユーザー2~3万人がセカンドライフを利用しており、オンラインゲームなら十分な数だとしている。

「日本で今後見直す動きが出る」と断言

   日本で批判的な人が増えていることについて、マグスルの新谷卓也社長は、マスコミの影響もあると指摘する。

   事業縮小のお知らせでは、「個人の思い」として異例の長文を掲載した。それによると、ブームのころは、楽しさよりビジネスに報道の力点が置かれ、「お金が儲かる次世代インターネット」と盛んに流された。セカンドライフには、友だちとチャットを楽しみ、様々な教室で新しいことを学ぶなどの楽しみがあるという。それが先入観で歪められてしまって批判的な見方が広がり、セカンドライフを見たり理解したりしていないのに「もう終わった」と報じられたというのだ。

   新谷社長は、取材に対し、セカンドライフには楽しい部分がたくさんあるとして、「日本で今後見直す動きが出る」と断言した。

「ケータイの各種サービスでも、最初はアバターを作るだけだった個人ユーザーが、それを動かしてコミュニケーションを楽しむようになっています。慣れてきてアバター利用への要求は高度化すると予想され、いずれパソコンでも楽しむと考えています」

   セカンドライフ事業も撤退を決めたわけではなく、個人ユーザーへのリンデンドル販売は落ち込んでおらず、今後も続けていくという。同社によると、この部門は、事業の8~9割を占めている。レンタル事業についても、「Shinjuku SIM」など3地区を建物付きレンタル中心にするなど、様々な方向性を試す。

   もっとも、エロやギャンブルのスポットさえ利用が低迷していただけに、どのようにして盛り上げるというのか。新谷社長はこう説明する。

「ツイッターなどリアルタイムのネットコミュニケーションが普及してきたので、3Dアバターの選択肢も今後大きくなるはずです。例えば、インディーズミュージシャンのライブは限られた人たちのものでしたが、アバターなら時間や距離を超えてライブを楽しめるようになります。アバターが身近になれば、その楽しみが自然に分かってくると思っています」