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若者のトップブランドはユニクロ ファストファッションここまで成長
インタビュー「消費崩壊 若者はなぜモノを買わないのか」第6回/辻田泰子氏に聞く

   「ユニクロ」「H&M」「フォーエバー21」といった、流行の衣料品を安く提供するファストファッションが売れまくっている。ファッション消費に詳しい伊藤忠ファッションシステムの辻田泰子さんに、ファストファッションの現状と未来について聞いた。

トレンドが低価格だから買うという感覚

ユニクロがブランド化していると指摘する辻田氏
ユニクロがブランド化していると指摘する辻田氏

――ファストファッションはどんな人たちが買っていくのでしょうか。

辻田 幅広い世代が買っていきますが、やはり10代後半から20代の若者が特に多いです。景況感の影響はもちろんありますが、お金がないから安いものしか買わないのではなく、トレンドが低価格だから買うという感覚なんです。他の世代もそうですが、若者は特にそうですね。一時、ラグジュアリーがトレンドだった時がありました。みんな、食費を削ったり、アルバイトしたりして、ブランドバッグを買いました。それがカッコイイと思われていたからですが、今は逆で「どれだけ安く今ドキのモノを買ったか」がカッコイイと思われています。友達の間で話のネタにもなりますし。

――どのブランドが人気ですか。

辻田 ちょっと前のことですが、ファッション好きの若者に行った調査で「どこのブランドが好きですか」と聞いたところ、「ユニクロ」がトップにきたんです。調査には「ユナイテッドアローズ」や高級ブランド「プラダ」などが選択肢に含まれていたんですが、「ユニクロ」がそれと同等以上の存在になっていて、一番好きで、一番買っているという結果になりました。好きなブランドとして、ユニクロ以外のブランド名があまり出てこないんですよ。

――若者は高級ブランドに興味を示さなくなっている?

辻田 有名ブランドに対する熱烈なロイヤリティが下がっているのは確かでしょう。それより、どこのショップで買ったとか、友達や人気のタレント、モデルと一緒の商品、が重要のようです。高級ブランドのショップも一応見にいく。でも、あくまで参考にするだけ。似たようなデザインのものを安い店で買ったり、オークションで探したり、という買い方が広がっています。
   自分の気分に合わせて自由に選びたい。また自分で組み合わせるスキルを持っています。いつも旬でいたいから、高い服は買わないんです。当社の20歳代の女子社員が「フォーエバー21」でパーティ用に派手なドレスを毎回買って、同じものはあまり着ない、と言っていましたけれど、そんな気分なんですよね。

ファストファッションがベースになる

――ファストファッションは今後も売れ続けますか。

辻田 というより、今後はファストファッションがベースとして当たり前になっていきます。都心中心に展開しているH&Mやフォーエバー21も今後全国に進出していきます。でも、安いだけが売りではダメ。何か独自の魅力がないと。価格を下げたら売上げ点数を伸ばさないと収益が出ませんし。
   「東京ガールズコレクション」でモデルが来ていた服はすごく売れていますが、同じブランドでも別の商品はそうでもないと聞いています。モデルやタレントが着ている服というだけでは、これからは厳しい。波及効果はそれほど続かないのです。

――ファストファッション以外の衣料品はもうダメなのでしょうか。

辻田 ファストファッションに触発されて、日本の若者向けレディースファッションが「H&M」と変わらないくらいに値段を下げるという動きも見られます。でもファストファッションという切り口以外で売れている服もありますよ。最近では、女優の宮崎あおいさんがテレビCMに起用された「アースミュージック&エコロジー」がすごく売れているみたいですね。CMを観た人はファッションブランドだとは思わずに、エコなことをやっている企業だと思ったようでホームページにアクセスが殺到したそうです。宮崎さんの歌声とか雰囲気が今の時代の気分に合っていたんだと思います。もちろん商品の価格はリーズナブルですし。
   要は、いろいろ仕掛けが必要で、例えば環境というキーワードは20歳代に響くんです。売上の一部をエコ活動に使うというような「買った後に自分の行動が何かにつながっていく」という実感を持ってもらうのもポイントです。

辻田泰子(つじた・やすこ)プロフィール

伊藤忠ファッションシステム(株)ブランディング第1グループリーテイルソリューションビジネスユニット マネジャー。大手百貨店、インポート衣料・雑貨を中心としたセレクトショップで販売・バイイングに従事した後、現職に至る。主に、百貨店を含む商業施設開発・リニューアルに向けたマーケティング調査及びプランニング、小売に向けた売場展開案立案及び実施支援などに携わる。