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人民元の切り上げ近い? 年5%程度の幅が有力

   中国の通貨、人民元の切り上げがカウントダウンに入ったと見られている。先進国の低迷を尻目に高い成長を続ける経済力に比べ、通貨価値が低すぎることに、米国を中心に不公正批判が強まっていることが背景にある。経済学的には至極当然の流れだが、日本も影響は免れない。

   ドルや円、ユーロなど各通貨は、国際的な市場取引で価値が決まる「変動相場制」になっている。その中で、中国だけは当局が通貨価値をコントロールし、人民元の価値はドルに連動している。

米国には元安で赤字が膨らみ、打撃受けているとの不満

   以前はドルに人民元が完全に連動する「ドルペッグ」制を採っていたが、国際的な非難を受け、2005年7月に人民元を2.1%切り上げるとともに、一定の変動幅の範囲内で日々、人民元価値が変動する「管理変動相場制」に移行した。この結果、徐々に人民元高が進み、当初に比べて人民元の価値は対ドルで約2割切り上がった。ところがリーマンショックを頂点とする金融危機を受け、08年9月以降は1ドル=6.8元台に固定されている。

   元安・ドル高だと、中国からの輸出が有利になる。米国では対中赤字が09年に2000億ドル近くに達し、人民元の価値の過小評価で貿易赤字が膨らみ、国内産業が打撃を受けているとの不満が高まっている。特に今秋に中間選挙を控えていることもあって、対中制裁論が高まり、政府も中国に強く出ている。

   これに対し中国は、「外圧」による政策変更を拒否しながらも、4月の米中首脳会談の際に胡錦濤主席が「人民元改革を推進する方向は変えない」と言明し、実質的な元切り上げ観測が強まった。国内にお金が溢れ、経済の過熱化・バブル化の危険が高まっている、という中国側の事情もある。

強い元日本買い占めの可能性

   実際に、いつごろ、どのくらいの幅で切り上げられるかはギリシャ問題などもあって不透明だが、中国としては5月下旬の米中戦略対話、6月26、27日の主要20カ国首脳会議(G20)などをにらみながら、慎重に判断すると見られる。幅については、中国は80年代後半のプラザ合意後の急激な円高という日本の経験を研究し、「円高による不況から脱出しようとしてバブルが発生し、バブル崩壊による長期低迷につながった、と分析している」(シンクタンク・アナリスト)といい、緩やかな元高しか容認しないとの声が一般的だ。「年率5%程度の切り上げ」(同)の可能性が高いとみられる。

   元が上昇する、つまり元に対してドルが安くなると、他の通過に対してもドルの価値が下がったという連想が働き、円も元につられてドルに対して高くなる可能性もある。そうなれば、日本のドル建ての輸出にはマイナスだ。

   ただ、日中の経済の勢いの差は歴然で、中長期的には円に対して元が高くなるのは必至。これは対中輸出には有利、中国からの輸入には不利なので、ユニクロなど中国で安く生産して日本に輸入している企業にはマイナスに働く。中国に進出している日本企業で、自動車のように現地調達が少なくて現地販売が多いところは円建て利益が増え、電機など現地での部品調達が多いところは円建ての利益が減る計算だ。

   それ以上に問題なのは中国企業による日本企業の買収かもしれない。強い元になることで、中国企業が日本企業を買いやすくなるからだ。世界的にも資源を買い漁るなど中国の動きが強まりそうだ。