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口蹄疫ウイルスどこから侵入 同型確認の韓国、中国から?

   宮崎県で感染が拡大している口蹄疫の問題で、県内でのワクチン接種作業が本格化している。そんな中でも、未だ明らかにならないのが、その感染経路だ。宮崎県で確認されたウイルスは、韓国や中国で発生したのと同じ「O型」と呼ばれる種類のものだとは分かっているものの、それがどのようにして感染したかまでは明らかになっていない。一方、お隣韓国では、かなり経路が絞り込まれている様子だ。

   宮崎県は、実は2000年3月にも口蹄疫の被害を受けている。92年ぶりの発生だったが、早急な対応が奏功し、被害を受けた農家は3軒、殺処分された牛も35頭にとどまった。

韓国のウイルスとは98.6%遺伝情報が一致

   一般的に、口蹄疫ウイルスの感染経路は(1)直接接触や咳を介して、動物から動物に感染(2)感染した動物と接触した人間がウイルスを運んで感染(3)ウイルス感染した動物の糞尿と接触した器具を介して感染、の3つがあるとされる。

   このときの感染経路は(3)が有力だとされており、00年9月1日に、農水省は感染源について「他の要因に比べて中国産麦わらの可能性が最も高い」と発表しているが、結局は感染経路を特定するに至っていない。これをきっかけに、飼料用わらは輸入から国産への転換が進んでいる。

   この時「わら」が感染径路として疑われた根拠のひとつが、「ウイルスの遺伝子を分析した結果、東アジアで流行したものと同じ型のものだった」というものだが、今回の口蹄疫についても、この構図は同じだ。

   5月2日の農水省の発表では、宮崎で確認されたウイルスはO型のウイルスであることが判明し、「O/JPN/2010」と名付けられた。さらに、このウイルスの遺伝情報は、10年2月に香港で採取されたウイルスのものと99.2%、韓国のウイルスとは98.6%一致していることがわかっている。

   このO型のウイルスは、10年2月に広東省で発生。それ以降、香港を含む周辺地域で、相次いで確認されている。

   韓国でも、2010年1月に北西部の京畿道(キョンギド)の農家でA型ウイルスが確認され、A型が終息した直後の10年4月には、ソウル近郊の江華島(カンファド)でO型が発見されている。

   現地の報道を見る限りでは、韓国では、A型についてもO型についても、かなり感染経路が絞り込まれている様子だ。

   東亜日報や中央日報が、国立獣医科学検疫院による調査結果を詳しく伝えている。10年1月のA型のケースでは、北東アジア、具体的には中国かモンゴルから韓国に出稼ぎに来た労働者が韓国にウイルスを持ち込んだとみられている。労働者は09年10月に韓国に入国したが、09年11月に母国から仕送りとして送られてきた服や靴にウイルスが付着していた疑いがあるという。

中国旅行した農場のオーナーが感染源

   今回問題化しているO型の感染経路は、もっと単純だ。感染源の可能性が高いのが、感染が起こった農場のオーナーだ。(1)オーナーは3月8日から13日にかけて中国に旅行し、帰国後消毒せずに農場に入った(2)その時期、旅行先では感染が多発していた、というのがその理由だ。韓国の農場で発見されたウイルスの遺伝子情報は、旅行先の中国のものと99.06%が一致したという。さらに、飼料の輸送や、人工授精技術者と地元農家との会合を行ったことが原因で、ウイルスが周辺の金浦市、忠州市、青陽郡、忠清北道などの自治体に広がった可能性も指摘されている。

   日本国内に話を戻すと、感染径路の解明は、決して政府にとっては「最優先」ということではない様子だ。赤松大臣の発言の中で、感染源解明について触れているのは、5月18日の会見での

「感染源がどうだったのか、感染経路がどうなのか、専門家の方にきちっと出していただいて、それなりの答えを出していきたい」

という発言が最後だ。