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タクシー不況にあの手この手 「子育て」「らーめん」「便利屋」…

   不況下で客足が伸び悩むタクシー業界で、あの手この手でお客を獲得する動きが出てきた。子どもや妊婦が利用できる「子育てタクシー」、ラーメン屋を巡る「らーめんタクシー」、お客に代わって病院の受付や薬の受取りをする「便利屋タクシー」、車いすのまま乗車できる「介護タクシー」などが登場している。

   子どもや妊婦の送迎を行う子育てタクシーが、全国規模に広がっている。業界団体、全国子育てタクシー協会には2010年7月現在で68社が加盟している。子どもの年齢に合うチャイルドシートが用意され、運転手はベビーカーのたたみ方などの必要な講座を受けているので、安心して子どもを任せられると保護者に好評だ。不景気で共働きの家庭が増えていることもあり、協会担当者によると、利用者は着実に増加傾向にある。

子育てタクシー年々、加盟社が増えている

不況で利用客が減り、特色を出そうとするタクシー会社
不況で利用客が減り、特色を出そうとするタクシー会社

   不況で利用客が減り、特色を出そうと子育てタクシーを始める業者も少なくない。事務局の担当者は、「地域により差はありますが、年々、加盟社が増えています」と話す。

   都タクシー(京都市)は3年前に子育てタクシーを始めた。リピーターが多く、小さい子どもが乗る時には不安がらないようにと、極力、同じ運転手が担当するようにしている。運転手の顔を覚えて、「おじちゃん、また来てね」という子どももいる。

   子育てタクシーを始めて、通常のタクシー利用も増えた。都タクシーの担当者は、

「子育てタクシーをきっかけに、当社を知ったというお客様もいます。また、会社の信用やイメージアップにつながっているのかもしれません」

と話している。

福岡で4店ほどラーメン店を巡る

   福岡市タクシー協会は市内ラーメン店を巡る「らーめんタクシー」を5年前に始め、2010年7月現在で37社が導入している。2時間以上タクシーを貸し切りにし、4店程度のラーメン店を巡るツアー。 「せっかく福岡に来たのだからおいしいラーメンを食べたい」「ちょっと時間があいたけど、どこに行っていいのかわからない」という観光客を対象にしている。ラーメン店は地元で評判の高いというグルメ本『福岡の本当に旨いラーメン』に掲載されている店舗に参加してもらっている。

   福岡市タクシー協会の担当者は、

「テレビや雑誌などたくさんの取材を受け、2、3億円の広告効果があり、話題性はありました。売上げのほうにもつながって欲しい」

と期待する。

   また福岡市では、お客に代わって病院の受付や薬の受取り、子どもの塾の迎えや買い物代行などを行う「便利屋タクシー」や、ホームヘルパー資格を持った運転手が高齢者や体の不自由なお客を送迎する「ケアタクシー」もある。

   車いすのまま乗車できる「介護タクシー」を導入する事業者も増えている。約140社が加盟するウィル介護タクシーグループ(東京都)では、6月の利用件数が1400件で、09年月間平均の1000件を超えた。

   09年5月から旅行会社JTBと提携し、介護タクシーで巡る観光サービスを始め、10年4月には夜間サービスを開始。2年後には専用車両が現状の180台から300台に、将来的には500台に増える見込みだ。高齢化で需要が高まり、新規参入が相次いでいる一方で、廃業も多い。ウィル介護タクシーグループの担当者は、

「介助、接客、営業をこなさなければならず、運転のプロというだけでは難しいです。大手タクシー会社が5年前に介護タクシーを導入しましたが、23区では撤退しました」

といっている。