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「人生の大半島暮らし」の30代主婦 200万部突破驚異の大ベストセラー

   松たか子さん主演で話題になっている映画『告白』の原作本が売れに売れている。作家・湊かなえさんのデビュー作で、4月に文庫化してすぐにブレイクし、発行部数では200万部を超え、湊さんも一躍時の人となっている。

   2010年7月26日付けのオリコンランキングの「本、文庫部門」で『告白』(双葉社)が1位を獲得した。4月に発売され、首位は通算14週目。5月31日付から9週連続で首位を記録している。

デビュー作とは思えない緻密な構成

ベストセラーとなっている『告白』(双葉社)。
ベストセラーとなっている『告白』(双葉社)。

   ランキングがスタートした08年4月以来、「通算首位週数」「連続首位週数」でトップだった東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』(文藝春秋、08年8月発売)を上回った。オリコンによると、文庫本では2010年初のミリオンセラーだという。

   湊さんのデビュー作で、書籍版は08年に発売され、これまでに70万部を発行している。娘を亡くした中学校の女性教師の復讐を描いたミステリー。「真奈美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」と、クラス全員の前で告白するシーンから始まる。デビュー作とは思えない緻密な構成と、罪の重さをテーマにしたシリアスなストーリーが受け、「第6回2009年本屋大賞」「2008年週刊文春ミステリーベスト10」で1位になった。

   湊さんは、1973年生まれ。人口約2万5000人の広島県因島で育った。これまでのインタビューなどによると、穏やかな島で空想ばかりしていたという。武庫川女子大学(兵庫)を卒業後、アパレルメーカーに就職。1年半勤務した後、青年海外協力隊に応募して2年間トンガ王国に赴任している。

兵庫県淡路島で主婦業をこなしながら執筆

   帰国後、結婚。時間の余裕ができたことから、30歳のころから執筆を始めた。「形に残せるものに挑戦したい」という思いがあったという。最初は脚本家を目指し、05年に新人脚本賞で佳作入選したが、「新人で地方在住は難しい」と言われ、小説に転向。兵庫県淡路島で主婦業をこなしながら執筆してきた。

   「人生の大半が島暮らし」だといい、10年1月に発売された『Nのために』(東京創元社)でも島出身の若者を描いている。6月には故郷・因島の市民会館で「凱旋上映会」が行われた。因島にとって、湊さんは同郷のロックバンド・ポルノグラフィティと並ぶ誇りのようだ。

   双葉社によると、『告白』文庫版は発行部数では、6月末に200万部を突破、現在208万部発行されている。文庫・書籍含めて、100万部を突破するのは双葉社にとっても初めて。それだけに担当者は、

「08年に書籍版が発売された当初から、書店の方で売場を作ってもらって大きく展開して頂き、新人作家のデビュー作としては異例の売れ行きでした。文庫の方は、ダブルミリオンを超えましたが、本が売れないと言われている昨今、弊社としても驚くくらいの動きです」

と話している。